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外食業界の次の一手は?


多くの企業が人手不足に苦しんでいますが、その中の代表例で痛手を被っているのが飲食業ではないでしょうか。今回は外食業界の抱える人材の問題点です。




飲食店は事業構造的にアルバイトの時給を上げることがなかなかできていないのが現状です。時給を上げることができないが故に、人が集まらないという悪循環に陥ってしまっているのです。
コロナ禍ではアルバイトを解雇した飲食店も多い状況で、他の業種で働く選択をしたケースも多かったようです。そうした人たちが外食業界に戻ってきたかというと・・・、そういうわけではないのでしょうね。




それでは、外食業界の人手不足はどれほど深刻なのかと言うと、東京都内の牛丼の「吉野家」の場合、アルバイトが集まらないために休業へ追い込まれてしまいました。
東京の平均時給と比べても遜色のない時給1,500円でアルバイトを募集していても、人が集まらない状況・・・。
実際、パート・アルバイトなどを含む非正社員の人手不足割合の業種別は「飲食店」が85.2%で、全業種の中で唯一80%を超えるほどの高さです。その背景にはパート・アルバイトなどを含む非正社員が就業者全体の70%以上を占めているという飲食店のビジネスモデルが関係しているのでしょう。(帝国データバンクより)




飲食店は利益が出にくいビジネスのため、人件費が高い正社員をたくさん雇うのは困難です。そこで時間給のパート・アルバイトを活用して、人件費をコントロールしながら運営してきたわけです。
マイナビの調査によればアルバイト先を選ぶポイントの1位が「給与の高さ」となっている中、他の職種と人材獲得競争が起きたら、外食業界が選ばれる可能性は低くなります。
ちなみに、外食業界の全国平均時給は1,065円となっており、それより下は「販売サービス関連」「アパレル・ファッション関連」「エステ・理美容」の3つしかないようです。




飲食店も時給を上げれば良いのですが現実的には困難で、その理由は大きく3つあります。
1つはコストの上昇です。
外食業界では人件費だけでなく、原材料費の高騰も大きな問題です。
専門的には原材料費(Food)と人件費(Labor)の頭文字をとって「FLコスト」と呼ばれていますが、飲食店を経営する上で重要な指標の1つです。
FLに「家賃(Rent)」を加えたFLRコスト比率を70%に抑えることが利益を確保するために欠かせないと昔から言われています。
家賃は固定費なのでコストの削減は困難なため、人件費と原材料費をコントロールする必要があるのですが、どちらも高騰しており従来のビジネスモデルが通用しない状況に追い込まれているのです。
値上がりの品目については「電気」「食用油」「ガス」がトップ3を占めていて、いずれも日常的に使うものなのでなかなか節約ができず、コスト増としてダイレクトに負担がのしかかっている状況のようです。
このコスト高の状況に対応して多くの飲食店で値上げをしたわけですが、現在起きているFLコストの上昇は、ビジネスモデルを変革させる程に大きな出来事だとも言えるでしょう。




2つ目は生産性の低さです。
コストが上昇していても生産性を向上させることができれば、それを吸収することもできるのですが、外食業界は生産性を向上させるのが難しい業界です。
そもそも「労働集約型」であるだけでなく “消費期限”のある物を扱うため在庫が持てない。
要するに、暇な時間にあらかじめサービスを作っておき、忙しくなったら提供するということができないため、生産性の向上に限界が生じるのです。
こうした外食業界ならではの特性のために利益が出にくいビジネス構造となり、アルバイトの賃金も低いままとなってしまう。結果として、それが離職率の高さに結び付き、人手不足の原因になっているというわけです。




3つ目は低価格の価値観。
物価は上がってきたと言われていますが、ご存知の通り今の日本は世界に比べるととても物価が安い。牛丼、ラーメンの価格も1,000円札があれば十分お釣りがくる状況。飲食店は価格が「安くて当たり前」という価値観があるのではないでしょうか。
ちなみにアメリカにある日本のラーメン店だと約20ドル+税金+チップ・・・ラーメン1杯が3,000円くらいします。
日本の物価は主要先進7カ国の中で突出して低いだけでなく、ここ数十年で物価が低迷し続けているのは日本だけなのです。(経済誌『エコノミスト』)
現に、値上げラッシュがあったとはいえ、日本人の価格に対する要求は厳しく、価格を据え置いている「サイゼリヤ」や「焼肉きんぐ」のようなお店が大きな支持を集めている状況ですね。
外食業界の時給の安さと人手不足は解決できないのか?というと、決してそうではないはずです。今までにないやり方を検討しないといけないですね。







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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役  渡邉拓久




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スマホを味方につけて


皆さんは、スマホのカメラ機能ではなく、従来のカメラを使うことは最近ありましたか?
カメラの中でも最近「チェキ」が売れているようです。
確かに大型家電量販店や、東急ハンズ、LOFTなどにも販売ブースが必ずあります。
失礼ながら「今さらチェキ?まだ売れているの?!」と思っていたものの、まさかの好調な売れ行きのようでビックリしました。




ご存知だとは思いますが「チェキ」は、撮ったその場で現像された写真フィルムが出てくるというものです。
1998年に富士フイルムから発売され、今年2023年で発売25周年を迎えるそうです。
スマホの登場で、写真は誰にでも撮影できるものとなり、即座にデータをやりとりできるなど便利になりました。
スマホのカメラ機能の進化とともに、チェキのようなアナログカメラは衰退していきそうなものですが、そのアナログ感が逆に魅力となっていると言うのです。




近年はBluetoothでスマホと連携させることで、楽しみの幅を広げる製品を開発したそうです。
本体での撮影だけでなく、スマホで撮った写真の印刷もできるハイブリッドタイプと、スマホで撮った写真を印刷するためのスマホプリンタータイプの2種類があります。
特に好調なのは遊べるスマホプリンター「Link」シリーズ。初号機は2019年に発売され、ランダムもしくは簡単なテストの結果に基づく「相性診断機能」などが話題。
さらにはリニューアル製品として2022年に「INSTAX mini Link 2」を発売。
止まることなくアナログ版なりの機能を発展させているわけです。




この製品は単にプリンターとして使えるだけではないようで、プリンター本体をスプレーのように持っている姿を専用のスマホアプリで撮影することで、空間に絵や文字を描くことができるAR(拡張現実)機能を搭載しているというのです。凄い進化ですよね。
この新製品が牽引し、さらには俳優の広瀬すずさん、横浜流星さんが広告塔となりチェキで遊ぶ広告も功を奏してか、2022年国内での売り上げは前年度比3割増だったそうです。




また本体の機能だけでなく、チェキ専用フィルムのサイズ展開も拡がっています。
現状、定番のカードサイズに、2倍サイズのワイド、正方形のスクエアの3種類に拡大展開。
販売の伸びが著しいのはスクエアフィルムのようで、2022年度までに販売数量は約6倍で、さらなる販売数増加を見越しているそうです。




INSTAX mini Evo



最近では、若い女性が中心だった顧客層にも変化が出ているようで、男性層への販売の伸びが大きくなっているのが、クラシカルなデザインの「INSTAX mini Evo」。

かわいいカメラが中心のチェキのイメージを変えた製品(お値段も大人なお値段)です。




スマホの普及により、写真を撮るための機械である従来のカメラの販売台数は激減しました。
カメラはスマホの手軽さだけではないカメラ本来の撮影機能に長けていることは確かですが、プロやアマチュアカメラマン向け以外に大きな需要を作り出せていないことは、誰もが想像できると思います。

一方、チェキの使い心地や楽しさはスマホにはありません。
チェキの写真は、キーホルダーとしてバッグにぶら下げたり、透明なスマホカバーの中に挟んだり様々なカタチで活躍しているそうです。

チェキは今後も、スマホを味方につけて好調な売れ行きを維持しそうな感じですね!




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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久




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スマホ業界に大きな波


私達の日常生活に欠かせない存在のスマートフォン業界にも、大きな変化の波が来たようです。
スマートフォンの「arrows」シリーズやシニア向け「らくらくスマートフォン」シリーズを製造・販売するFCNT(株)が今年の5月末に民事再生法の適用を申請。
帝国データバンクの情報によると、親会社を含めたグループ計3社で負債総額は約1,200億円に上るそうです。




FCNTの主力製品である「らくらくホン」は、視力やタッチ操作に不安のある世代にもなじめる設計が特徴で、操作性においてもユーザーへの配慮があります。携帯電話の販売事業者にとっても、シニア世代をターゲットとした重要な位置付けの製品シリーズだったようです。
「らくらくホン」のような特徴のある製品を持つFCNTは、スマホ業界の「ニッチ」なポジショニングを獲得している企業ではないでしょうか。
そんなFCNTがなくなる今、事実上、国内のスマートフォンブランドはソニーの「Xperia」とシャープの「AQUOS」しか残っていないことになります。




10年くらい前は、かなり多くの選択肢があったことを記憶していますが、今やこんな状況なのですね。FCNTは直近まで通常の営業を行っていたようで、業界内でも突然の発表だったようです。
2022年からの急激な円安とスマートフォン市場の成熟化といった背景もあり、収支改善の道筋をつけることができなかったそうです。
そして、コロナ禍だった近年のスマホ業界全体は、半導体を中心とした部品不足が深刻でしたが、FCNTのようなメーカー側は為替変動などの影響を受けやすい状況だったことも、今回のタイミングでの破綻に繋がった可能性もありそうですね。




さらには、スマホの「実質価格」について、総務省の方針というメーカー側ではコントロールできない規制が絡んだこともマイナス要因に働いていると言われています。




“0円スマホ”が姿を消したことは皆さんもご存知ですよね。
日本国内の携帯電話契約者数が飽和するなか、顧客獲得のための過度な値引き競争が進むことを総務省が懸念して、通信料金と端末料金の明確な分離や、端末割引額を2万円までとする上限規制などの施策を導入したことで、「実質0円」スマホがなくなったわけです。
その結果、「実質0円」とすることで売れていた国内メーカーのミドルクラス端末の販売力が低下してきたという実態もあるようです。




その状況下で、大きな事業基盤を持つ価格競争力の高い中国メーカーが、日本の携帯電話事業者のラインナップに増加。国内スマートフォンメーカーを一段と苦しめる一因にもなっています。
そして決算状況は、2022年3月期時点で売上高約843億円に対し、売上原価は約679億円。売上原価はおよそ80.4%にもなっているという状況です。この原価の中には当然、国内での費用も含まれるわけですが、ドル建て調達の部品コストがあることも業種柄から想像できます。円安が進んだ2023年3月期の決算は未発表ですが、さらに原価率が悪化している可能性も大いに考えられます。少なからずここ数年、全く粗利が稼げていないということになります。




このような販売・財務状況の全体感からも、FCNTが自主再建を断念したのは不思議なことではないですね。
スマホ市場の中の「ニッチ」な地位を獲得してきた企業も、決して盤石ではないということです。皆さんも外部環境も含めて、先々の自社の展開を改めて見つめ直すことも必要かもしれませんね。




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パチンコとゴルフの関係


ちょうど気候のいい時期に入り、ゴルフ好きな方には楽しい時ではないでしょうか。
今回は「ゴルフ関連」にフォーカスしてみました。




ここ3年のコロナ禍は「ゴルフは感染リスクが低い」と言われたことから、ゴルフ界にも影響を与え、20代、30代などの若年層のゴルフ人口が増えたそうです。
リモートワークの普及で都市部、特に東京都内中心部ではオフィスの縮小、移転などもあって空室がかなり増え、そこに“インドアゴルフ練習場”がつくられるケースが多くなったようです。
一方、屋外の大きな練習場は閉鎖が続いているようです。
全日本ゴルフ練習場連盟の調査によると、2022年の1年間に屋外練習場は全国で31カ所減り、インドア練習場は57カ所増えたそうです。





実際に、我々の東海圏内でも名古屋を中心にちょっとした居抜き物件に、インドアゴルフ練習場ができているのをかなり多く目にするようになりました。
「ちょっとした」と言える程、かなり狭いテナントスペースを再利用しているという驚きもありますが、関東地域ではパチンコ店を再利用したインドア練習場もできているそうです。
例えば「インドアゴルフ・リーブル」という店舗は、まさにパチンコ店を彷彿させる建物の外観。
リーブルのグループ会社が運営していたパチンコ店を“業態変更”してインドア練習場にするという試みです。





パチンコ人口が年々減っている中、コロナ禍もあって、パチンコ業界としても新しい業態へのシフトを急ピッチで検討していることでしょう。
レジャー白書によると、2021年のパチンコ参加人口は720万人でピーク時の4分の1ほど。警察庁の発表資料によると店舗数も2022年は7,665店で、前年より800店ほど減少。業界も回復に力を入れているそうですが、やはり今後はパチンコ店のみの事業展開では難しいのも事実です。





この業態変更した「インドアゴルフ・リーブル」は、立地も駅から徒歩圏内でありながら、パチンコ店ならではの広さと天上の高さが最大限に活かされ、打席数も多く、先ほどの名古屋の小さなインドア練習場とは異なり、郊外の屋外練習場で練習しているような気分になれます。
さらに打席は壁で仕切られていてプライベート感がしっかりある造り。これは、ミスショットした時に丸見えで恥ずかしいという初心者でも落ち着いて楽しめる空間にするためのようです。私的にも嬉しい造りです(笑)





この「インドアゴルフ・リーブル」で、もう1つすごいのは「運転免許返納者限定特典」というサービスです。
車で郊外の練習場やラウンドに行けなくなったとしても、近くのインドア練習場に入会してゴルフに触れることができるということです。
運転免許返納者には、入会金を無料、初月会費50%オフの特典。
しかも、この「インドアゴルフ・リーブル」は24時間営業。
高齢者の方であれば、毎日行ったとしても1日330円ほどで済む料金設定だそうです。毎日は行かないとしてもリーズナブルな価格設定ですよね。





団塊世代が2030年に80歳になる「2030年問題」。
ゴルフ業界にとって、若年層の取り込みと共に高齢者のリタイア防止が大きな課題になってきます。
若年層のゴルフ参入への壁として“車離れ”による練習場やゴルフ場への「足」がない、という問題があります。同じく高齢者についても免許返納後の「足」の問題が出てきます。
最寄り駅からの送迎サービスなどで、練習場やゴルフ場に行けるようなサービスを考えていくことが必要になるのではないでしょうか。
パチンコ業界のみならず、ゴルフ業界にとっても今回のリーブルの取り組みが何かのヒントになるかもしれないですね。

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プライドをもって製品開発


皆さんはデザイン家電はお好きでしょうか?±0(プラスマイナスゼロ)、cado、ヤコブ・イェンセンなど様々なブランドがあります。おしゃれ好きな私は、できればデザイン家電を購入したいと思ってしまいます。実は、弊社の別会社の「リアルフリート」の名称は、私が好きだったデザイン家電アマダナの旧社名から付けました(笑) 様々なブランドが出ていますが、デザイン家電の代表といえば「BALMUDA(バルミューダ)」です。




バルミューダの魅力は、大手家電メーカーにはない斬新なアイデアと、おしゃれで機能的なデザインですが、その中でもコロナ禍でヒットした「トースター:BALMUDA The Toaster」が代表例でしょう。弊社にも少し前までありました。独自のスチームテクノロジーを採用しているこのトースターは、付属の小さなコップで少量の水を注ぐことで、焼き上がりが「外はカリカリ、中はもっちりふわふわ」という「窯から出したばかりのような食感や風味」が再現できます。価格は通常のトースターの数倍強の高級品ですが、2015年の発売から累計で100万台以上も売れているようです。すごいですよね!





この大ヒット製品のトースターを看板に、2020年東証マザーズへ上場。製品としては空調家電、調理家電、掃除機などを展開しています。売上規模約176億(2022年12月期)で、大手総合電機メーカー(例えばパナソニックの家電事業で約2兆円規模)に比べてかなり小さな規模ですが、大手メーカーにはない独自性と芸術性が魅力的な会社だと思います。




例えば、バルミューダは企画開発と販売に注力する体制で自社工場を持たず、製造は中国や台湾、国内の工場に製造委託する水平分業体制を敷いていて、そのため営業利益率は10%台(パナソニックは3%程度)と高いのです。また、白物家電と呼ばれるキッチン用品に黒物家電(AV製品等)のデザイン性や表面処理を採用し、スイッチやダイヤルひとつにも操作感と高級感にこだわるプロ仕様のテイストが魅力的で、すでに成熟した汎用品市場の中でも、高単価販売が出来ていることが特徴として挙げられます。




価格については、社長が「消費者感覚」に基づいて開発の初期段階で大体の販売価格を決めているそうです。それでも売れるのは「高収入の男性」を販売ターゲットとした『本物志向』『デザイン性』の追及と「クリエイティビティーによってお客様に選ばれている会社である」というプライドを以て製品開発と創意工夫を繰り返しているからでしょう。





例えば、「そよ風のような扇風機」「窯から出したばかりのパンの味を再現するトースター」といったコンセプトを立ち上げ、エンジニアとクリエイティブチームが一丸となって新たな製品開発に挑みます。そして完成した製品は「バルミューダ ザ・〇〇」という1つの型のみで展開し、発売したら5年~10年はモデルチェンジをしません。また価格も定価販売が基本です。一般的に家電品は年に2度程度モデルチェンジを行い、旧型はセール対象となって価格競争が巻き起こりますが、バルミューダにはそれがありません。つまり買った後に直ぐに古くならない点も魅力のひとつです。




物語仕立ての開発背景も、バルミューダのブランド力を支えています。例えば、掃除機については「クイックルワイパー派だった社長が、自分でも欲しいと思える理想的な掃除機を作り出すまで」という物語が販売時のパフォーマンスとして用意されていたようです。




最近では「BALMUDA Phone」でスマートフォン市場へ参入しました。思ったようには売れていないようですが、従来の大手総合電機メーカーにはない独自性と芸術性のある家電にはとても興味を惹かれるものです。バルミューダの次の展開に注目したいですね。




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