お知らせイラスト

チェルシー世代の動揺

2024年3月29日 金曜日

皆さんもニュースで目にした情報だと思いますが、大手食品メーカーの「明治」は、1971年に販売開始したキャンディー「チェルシー」の販売を終了することを決めました。

ほとんどの方が一度はチェルシーを食べた事があると思いますが、チェルシーと言えば黒地にピンクのパッケージの『バタースカッチ』が何とも言えない味ですよね。

「チェルシー」はスコットランドの伝統のお菓子を参考に開発されたキャンディーで、「バタースカッチ」と「ヨーグルトスカッチ」の2種類の味で1971年に販売を開始
その後、味の種類は増えて2002年度には約25億円を売り上げていたそうです。

引用:https://www.meiji.co.jp/sweets/candy_gum/chelsea/products/


しかしながら市場環境や顧客ニーズの変化で、2022年度の売上は約5億円と5分の1にまで落ち込んでいたということです。
このため、収益性の低下を理由に在庫がなくなり次第、令和6年3月中にも販売を終了することを決めたそうです。


先にもあげたようにチェルシーが販売終了となることが明らかになり、チェルシー世代?である消費者の動揺が広がっているようです。
約50年以上も愛されてきた長寿商品で「あなたにもチェルシーあげたい」のテレビCMでも親しまれていたことから、「突然のお別れ」となったことにネット上では嘆きとも言える声が飛び交ったのです。


チェルシー終了については、収益性の悪化を挙げているのですが、実際、ネット上の情報では店頭取り扱い数が減って、さらに売上減少に繋がっているのではないでしょうか。


そんなチェルシーが販売終了を公表してから1ヶ月を切った頃には、早くも店頭では品薄になっていたようで、私も店頭を覗いて見ましたが、飴コーナーのチェルシーだけなぜか売り切れ状態…
そして「メルカリ」などのフリマアプリで高額転売されるなど、ある種の社会現象になりつつあるのです。


過去にこのチェルシー販売終了と同じく衝撃だったのは、「ヤマザキナビスコ」の『オレオ』と『リッツ』です。
子供心に何だか優雅で贅沢なこの2品でしたが、ライセンス契約終了で日本にオレオが入らないかも!?みたいな事件でした。
結果、山崎製パン(株)傘下のヤマザキ・ナビスコがライセンス契約終了に伴い社名変更して、現在はノアールという商品で存続していますね。


こんなノリでチェルシーが残ってくれるとよいのですが、宣伝戦略としても、落ち目商品より売れ筋や新商品をアピールした方が効果的というのもよく分かる話です。
結果として、消費者は販売終了を決定事項として知り、もっと早く教えてくれれば…というように思う訳ですが、終わり際に惜しんで買う程に長い間気にもとめない商品になっていたのも事実ですね。
私も衝撃とショックを受けながらも、まともに買ったのは何十年前かという感じです。ロングセラーの販売は、それだけ難しいものなのだろうと考えさせられますね。


『カール』のように、西日本では販売的に収益確保ができるとして『販売地域限定商品』のような変更対応が今回のチェルシーにも採用されるとよいのですが、経営的な観点では『長い歴史』や『思い』だけでは存続させられない、という判断も重要な事ですね。



______________________
経営コンサルタント
渡邉拓久


ページトップへ

遊べる本屋のジレンマ

2024年2月29日 木曜日

「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガード。

「ヴィレヴァン」の略称でも親しまれて、名古屋が拠点であることもよく知られていますが、このヴィレッジヴァンガードが、大きな赤字を出しながら低迷しているとのことです。

ヴィレヴァンの大きな特徴は、本やCD、DVDといった雑貨がジャンルレスにそこかしこに並べられ、まるで“雑多な倉庫”のようになっている店内空間です。

「本屋」ではあるのですが、CDやDVD、あるいは雑貨に洋服などなど…なんでもあり。
それぞれの商品にはその商品の魅力を伝えるPOPが書かれ、ちょっと面白いおどけた商品の宣伝が書いてあるのが特徴。


「ここにしかない」マニアックというかアンダーグランドというかサブカル的商品がたくさんあるのも魅力の一つだったと思います。


私も学生時代、ヴィレヴァンが大好きで愛知・岐阜・静岡など…当時は10数店舗しかなかったヴィレヴァンを巡った思い出があります。


現在は全国に307店舗を広げる上場企業です。
ただ数字的には…2023年11月中間決算によると、営業損失が7億4900万円、前年同期の1億7600万円の損失から赤字が大幅拡大してるのです。


既存店の数はここ数年で減り続けて、それによる単純な減収、そして人件費や物価高の影響も響いているようです。


売上高ベースで見ると、2016年5月期が最高収益のようで、約467億円(そのときも営業赤字は2億円ほど)。2007年に買収した中南米雑貨の「チチカカ」が、足を大きく引っ張っていたようですが、2017年には売却し、その後も黒字化と赤字転落を繰り返し、経営の足取りはふらついているようです。


そんなヴィレヴァンの店舗空間は、らしい「世界観」がそこに形成されていることです。

実際、「ヴィレヴァンっぽい」といったら、行ったことのある人はなんとなくそのニュアンスを理解できると思います。


ヴィレヴァンの成功のカギの一つが、このような独特な「世界」を空間的に作ったことにあると思います。
このヴィレヴァンの世界観を演出する空間戦略に、ここ十数年でいくつかの不調の原因が起こりつつあるのではないかと思うのです。


私なりに2つまとめてみると…

 1つ目は、最近ではYouTuberやVtuberとのコラボレーション商品も多く並ぶ一方で、これまで通りのマイナーな文学作品や同人漫画などの取り扱いもあり、そうかと思えば売れ筋漫画も置いてあるといった風景で、ターゲティングがあやふやになっている感が否めないこと。


2つ目は、似た店舗作りの企業がありながら明暗が別れたことです。
ヴィレヴァンと空間的に類似しているのが、驚安の殿堂「ドン・キホーテ」です。ドンキもまた、複雑な通路を持ち、雑多な商品を多数販売しています。


また、宣伝POPも工夫されていて、「ヴィレヴァンらしさ」を感じさせています。
でも、ヴィレヴァンが低調な業績なのに対し、ドンキは非常に好調で、創業以来増収を続けているようです。


店舗空間という視点でみれば、似た世界観を持つ両社ですが、どこにその違いがあるのでしょうか。


ドンキは、「MEGAドンキ」というGMS業態(総合スーパー)の開発を進めて、一般的なスーパーのような店舗で“ドンキ特有”のごちゃついた空間はなく、スーパーのように区画がはっきりとわかるのが特徴です。


これら店舗は、地域住民から普通のスーパーとして使われ、GMSの分野で業績を上げてきたのです。


また、その立地場所に応じた業態の開発を多く進めて、従来の「世界観」を柔軟に変化させ、企業側の意図を強くは押し出さずに展開。
一般ウケしているということですね。


ヴィレヴァン創業者の菊地氏(現会長)が、自分自身の好きなものをなんでも店頭に並べて、それをオススメする形で始まった業態ということを考えれば、そこに興味を惹きつけてきた理由だったわけですが…
ここまでの大きな企業になった以上は、なんとか時代に受け入れられるような店舗作りが迫られているわけです。


企業として大きくなったための問題点もあるのかと推測できます。
ある段階からイオンモールなどのショッピングモールへの出店を強めていっていることです。


私の印象では、モールを覗くと、そこにはヴィレヴァンが入っているイメージがあります。(実際に確認すると…イオンモールだけでも180店舗も入っています)


ショッピングモールへ出店するということは、モール側の取り決めの影響を受けるため、必然的にヴィレヴァンが持ってきた「サブカル」空間が薄まってしまいます。


失礼な言葉ですが、要するに「エッジ」が効いておらず中途半端になりがちなわけです。
それはヴィレヴァンらしさが失われてくることになります。


例えば、カルト宗教の本や、90年代若者に絶大な人気を集めた『完全自殺マニュアル』や『ドラッグ』系の書籍など…いわゆる「90年代サブカル」と呼ばれる書籍の取り扱いもあって、ここにしかないエッジの効いた展開をしていたわけです。


ドンキのようにマス市場に受ける業態展開ではないにしろ、エッジの効いたものを望む層もまだまだ多くいるのだと思います。


元々、ヴィレヴァンは立地を活かした経営をしていた過去があり、店舗の店長にかなりの商品選定の権限が与えられていることで有名でした。


そういう意味で、各店舗「エッジ」の効いた商品が並ぶ楽しさがあったのですが、POSシステムの導入で各店(店長)の独自商品を選定する裁量が無くなってきたということもあるそうです。


在庫管理や仕入ロスを考えれば仕方ない話ですが、ここにも低迷要因はありそうです。
ターゲティングを曖昧にさせず、そうした「エッジ」の効いた展開をどうにかして取り戻すことが、結局はヴィレヴァンが復活するために必要なのではないでしょうか。


大企業がためのジレンマなのかもしれないですね。



______________________
経営コンサルタント
渡邉拓久

ページトップへ

エレッセの再挑戦

2024年1月31日 水曜日

老舗企業も世の中の大きな変化に対して「抜本的な変化」を求められる流れがきているようです。
今回はその一例のお話として、イタリア発祥の老舗ブランド「エレッセ」についてです。
ほとんどの方がご存じだと思いますが、テニスで愛用されているカラフルなスポーツブランドというイメージで「ハーフボール」のロゴが目に浮かぶブランドですよね。

エレッセは日本におけるバブル期の代表的なブランドで、1980年代から大学生や若い世代の社会人の間で大流行したスキーやテニスで人気のスポーツブランドでした。
スキーウェアとテニスウェアは当時の若者たちから絶大な人気を集め、飛ぶように商品が売れたそうです。
街中では、エレッセのパーカーやトレーナー、ニットなどを好んで着る若者で溢れていました。現在国内では、以前にこのコラムで取り上げた「ザ・ノース・フェイス」で有名なゴールドウインが権利を有して事業を展開しています。

当時から30年の間に、エレッセは市場の急激な縮小を受けて、2011年にスキーウェアから撤退。残ったテニスとアパレルも売上は年々減少し、特に近年は販売不振が極まり、事業の継続が難しい状況にまで追い込まれていたようです。
今回の全面刷新は、まさに国内における「エレッセ」のブランドの存続をかけ、2023年の春にブランドの再スタートに踏み切るというものでした。 
エレッセの元々の定番は原色を用いたカラフルな商品でしたが、そのイメージを一変。ブランドマークの「ハーフボールロゴ」の使用もやめたようです。
ブランドの象徴でもあるハーフボールのロゴをやめるぐらいの刷新とは、かなり大きな賭けですよね。
最新ウェアでは、自然界からインスピレーションを受けた“くすみカラー”を全面的に採用し、無地のミニマルデザインを基本にしたのです。

エレッセの公式サイトで商品を確認してみるとよく分かりますが、これまでのエレッセのイメージとは明らかに違う“オシャレ”な感じです。今までの常識にとらわれない全く新しい価値を持ったテニスウェアを提案することを目指したようです。この路線変更の裏には徹底的な市場調査があったようです。
他社のブランドを含めて既存のテニスウェアはどのブランドも似たようなウェアばかりで選択肢がなく、ファッション感度の高い女性からは、ヨガなど他用途のスポーツウェアを着用しているとの声が多かったそうです。

そこでエレッセは『スポーツウェアの美しさにこだわる』を新たなコンセプトとし、人間が感じる色の印象について大学と共同研究し、商品のデザインに反映。新エレッセが採用した《ややくすみがかった》特徴的なカラーは、着用した人がもっとも美しく見えるよう考え抜かれた色だそうです。
デザイン以外でも、UVカットや通気性などの機能は当然として、テニスのプレー中の動きを解析して、ラケットが振りやすく快適に動けるパターン設計を採用。
また、体を美しく見せるカッティングにも配慮し、素材自体も肌触りや質感のよいものを厳選。一部の商品はイタリアの特殊な機械で編んだ高級生地を使用するこだわりだそうです。

その分、価格設定も高くし、半袖シャツは1万円以上のものが大半(主要ブランドの中心価格帯が7,000〜9,000円台)のようです。もともと安い商品を売るブランドではなかったようですが、より高価格帯にシフトし、高くてもおしゃれで上質なものを求める層へ明確にターゲットを絞ったようです。
長年の不振が続く中でエレッセのブランド直営店はなくなり、現在の主販路は公式オンラインと一部の店舗に限られています。

事業の存続をかけて思い切ったブランド刷新に踏み切り、独自の路線を打ち出したエレッセ。このブランドが提案する新たなテニスウェアが、おしゃれなユーザーに受け入れられるか注目していきたいですね。



_________________________________________

クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久



ページトップへ

BeReal

2023年12月26日 火曜日

皆さんはSNSをどれだけ使いこなしていますか?
私は特にInstagramやFacebook、Xなど個人が自ら情報発信するものは見る専門(こういう方が多いでしょうか)ですね。たくさんの情報を進んで発信されている方々には頭が下がります。
そんな昨今、ニュースで目にしたのは《SNS疲れを感じる若者》が増えてきているという情報です。生活の一部として自由自在に操るSNS世代でも、そう思うことがあるわけですね。
そんなSNS疲れを感じる若者を中心に人気が急上昇しているのが「BeReal(ビーリアル)」という2020年にフランスで開発されたアプリサービスです。

引用:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_63cf9259e4b0c8e3fc797034

文字通り《リアルを共有するSNS》で、よく聞く『映える』ことも『盛る』ことも出来ない仕組みになっているというものです。フランスやアメリカの大学生を中心に人気が出たそうですが、アクティブユーザーは2,000万人超えと利用者が増えているそうです。
日本国内でも、App Storeの「ソーシャルネットワーキング」内で2位、Google Playストアでは「ソーシャルネットワーク」内で4位(2023年11月時点)という順位なので人気ぶりがうかがえます。

BeRealを始めると1日1回通知が来るようで、早朝もあれば昼間や夜間の時もあり、毎日バラバラの時刻に一斉に送られて来ます。通知が来たら、2分以内に撮影して投稿しなければいけません。時も場所も選べませんので、寝起きでも、歩いている時でも、時間によってはスッピンの顔や散らかった部屋が写されることもあります。まさにリアルですよね。
2分以内に投稿すれば、ボーナスとしてその後2回投稿が可能に。反対に投稿しなければ友達の投稿は見られず、後で投稿すると遅れた時間が明記されるようです。
友達の投稿には、Realmojiというスタンプやコメントでリアクションができます。
このスタンプは「いいね」なら手でポーズをして撮影をしたり、驚いた顔や悲しい顔などを自撮りしたりして自分だけのスタンプを作成できるようで、投稿にはその人の友達の顔がスタンプになって並ぶという、文字通り「リアル」。


では、このBeRealは従来のSNSサービスと何が違うのか?ということになります。
『リアルを共有するSNS』にするために、BeRealには数多くの制限が設けられているようです。それは、


これまでのSNSとは異なる点が多いBeRealですが、何が若い人を惹きつけているのでしょうか。
それはBeRealの『ゲーム性』と『手軽さ』だと言われています。
今から2分以内に何かを撮影しなければならないという“緊迫感”に、本人も周りにいる友達も盛り上がるということです。
散らかった部屋が写っていても、ぼかす必要もありません。
さらに、投稿した写真は1日で消えるのでじっくり見返されることもなく「いいね数」「フォロワー数」などの表示はないため、人気度を測られたり競うこともないわけです。

他のSNSの形態そのものがBeRealのような機能に変化していくわけではないと思いますが、Instagramのストーリーズが人気になったように、親しい人とクローズドな空間で深い交流をする、という潮流も生まれてきたと捉えると良いのでしょうか。
リアルな友達とリアルな交流ができるという、今までの流れとは明らかに違うBeRealがどこまで世間に浸透していくのか、引き続き注目していきたいと思います。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久

ページトップへ

ベアリング

2023年12月7日 木曜日

さんは『ベアリング』というものをご存知ですか?
軸をなめらかに回転させるために用いるドーナツ状の部品なのですが、自動車や家電など身近な製品でよく使われています。

モノづくりに携わる方はご存知のように、ベアリングは「機械産業のコメ」とまで言われる重要な部品ですが、目に触れる場所に使われることが少ないため日常生活で認識されにくいと思います。
このコラムを書くにあたり《多くの経営者や経営陣の方々に魅力的な話題を》と意識しているのですが、今回は少しディープな『ベアリング』を取り上げてみたいと思います。

日本精工(NSK)がベアリングを提供したベイブレードの初期モデル。当時の子供に大人気だった。
引用:東洋経済ONLINE 11月14日 https://toyokeizai.net/articles/-/712248

ベアリングの国内シェア1位を誇る日本精工(NSK)の子会社(NSKマイクロプレシジョン株式会社)は子供向け玩具事業に取り組んでいて、具体的には競技用のコマやヨーヨー専用の高性能ベアリングを開発し、毎年のように新作を発表しているそうです。
私にとって玩具に使われるベアリングと言えば、子供の頃に流行ったミニ四駆のコーナリング用の部品(ガイドローラー)ですが、実際にミニ四駆市場にも同社は注力しています。

今年4月に幕張メッセで開催された大会では、3周で計20m程の専用コースを1秒台で走破する記録も出たそうですが、この大会に同社も協賛していて、出場した人気ユーチューバー10人に約30種類のベアリングを提供し、ガイドローラーに搭載してもらっていたそうです。同大会副賞は《製作用のベアリング1年分》と《フェンスカー(注1)専用のベアリングを一緒に開発する権利》で、受賞者を自社工場(神奈川県藤沢市)に招いて共同研究を進め年内の商品化を目指す、という夢のような内容。ファンや関係者の巻き込みも上手ですよね。
(注1)フェンスカー:ミニ四駆の速さを突き詰めた競技

日本精工(NSK)は、過去に2度の玩具に関する大きな成功体験があり、一つはタカラトミーがベーゴマを現代風にアレンジした玩具「ベイブレード」。ベアリングを提供した初期モデルが大ヒットし全国で売り切れ続出。パッケージにもNSKの3文字が大きく印刷されて知名度向上に大きく貢献しました。
二つ目は日本精工(NSK)が出展した展示会で「ヨーヨー向けの高性能なベアリングが欲しい」と、競技者から相談されたことがきっかけの競技用ヨーヨーだそうです。

また、2010年には「スリーパー」という空転時間の長さを競う競技(そんなのがあるのですね)で、当時の世界新記録となる21分21秒25を叩きだしたヨーヨーは日本精工(NSK)が開発したものでした。
最近のヒット作は「サターンスピナー」という玩具で、少し前に大流行したハンドスピナーの最上位モデルで、価格は約1万7000円…結構しますよね。
これは日本精工(NSK)の技術者が一つ一つ手作りし、一般的にハンドスピナーの回転時間の平均は約3~4分で長くても6分程度ですが、12分近くも回転し続けます。約700個の限定生産品は即完売で、フリマサイトでは一時、7万~9万円のプレミア価格で取引されたそうです。

ページトップへ

キンキュバ

2023年11月2日 木曜日

皆さんはKINCUBA(キンキュバ)を知っていますか?
「KINCUBA(キンキュバ)」とは、“KINDAI”と“INCUBATION”を組み合わせた造語で、近畿大学における学生起業家のための育成プログラムのことです。

ご存知の方も多いと思いますが、近畿大学と言えば何かと面白い取り組みをする大学ですね。
以前このコラムでも取り上げましたが、世界で初めて完全養殖に成功した「近大マグロ」が特に有名です。
まさにこの近大マグロが他大学に先駆けて『大学発スタートアップ』の成功例を生み出したと言えます。
しかしながらその後は起業数が伸び悩んだそうで、2022年度に50社(東京大学371社、大阪大学191社、立命館大学110社)と他大学から大きく後れをとっていたようです。(経済産業省調査)

ちなみに『スタートアップ』自体は日本政府も推奨する取り組みであり、岸田政権が旗を振る「スタートアップ育成5カ年計画」では2027年までにスタートアップ10万社の創出という目標を掲げています。その達成に向けて大きな起爆剤的な役割を担うのがこの大学発スタートアップでしょう。2022年度の大学発スタートアップ数は前年比477社増の3,782社と、過去最多の増加数を記録しているようです。(経済産業省調査)

学校法人近畿大学KINCUBA公式サイトより

近畿大学は、2022年にスタートアップ創出拠点の「KINCUBA Basecamp(キンキュバベースキャンプ)」を開設。
施設は月額500円で24時間利用が可能らしく、打ち合わせスペース、食品系の商品開発にも使えるオープンキッチンや、イベントスペースも備えているそうです。
法人登記をする際には同施設の住所を使うこともできるようで、コワーキングスペースより整った環境ですよね。

学生向けのイベントを週に何回も開催しているようで、堀江貴文さんを招いて事業計画を学生が披露する会もあったそうです。そこから得られるアドバイスは学生もテンションが上がりますよね。
2023年の起業は加速しているそうで、スイーツやラーメンの販売、昆虫食普及イベントの運営など業態は多様だそうです。

他大学では研究室での研究成果を基に教員などが起業するケースが多いようで、学生発の起業が中心の近畿大学は真の大学発スタートアップですよね。
近畿大学の狙いは、受験生などへの「大学発スタートアップと言えば近畿大学」というブランドイメージの浸透を図りたい想いも大いにありそうです。

学生も、これまでは同志社大学や立命館大学を目指していたけど『起業するなら近大』という情報に惹かれて、近大を選んだというケースが増えているようです。
実際、卒業までに起業してもしなくてもいいし、起業せずに就職したり大学院に行ってもいいわけですが、キンキュバで学んだことは就職活動時のアピールポイントにもなり、更には就職した後でも役立つわけです。

就職面接で、学生時代に注力してきたことの質問に対して『学生起業しました』『起業に向けて財務や事業立案を勉強しました』と答えられる学生は、他の学生と大きな差をつけられるわけですよね。
大学のオープンキャンパスでは起業した学生の紹介や起業の相談会も実施したり、キンキュバベースキャンプの見学会や学生による事業アイデア発表会も開催したりしているそうです。こうしたプログラムやイベントを通して「起業=近大」というイメージが定着しつつあるのです。
さらに踏み込んだ取り組みが、2023年に開講したばかりの起業家を育成する修士課程「実学社会起業イノベーション学位プログラム」というもの。


財務などの基礎知識の習得に加え、起業家やVC(ベンチャーキャピタル)との対話、スタートアップでのインターンシップを通して、2年間で自身の事業計画を試行錯誤しながら磨き上げていく。最終年度には修士論文ではなく、ビジネスプランを提出。
これが「特定の課題についての研究成果」として評価されるのです。実践的でとても学び甲斐がありそうですよね。私も大学院時代にこんな環境だったら、もっと違った発想や道を歩んでいたのかもしれないです・・・笑


弊社も今年、名古屋造形大学さんと産学連携プロジェクトをスタートさせましたが、学生の柔軟な発想にはとても大きな可能性を感じています。学生だからこそできる挑戦もありますよね!
近畿大学は創立100周年を迎える2025年度までに、同大学発のスタートアップを100社創出する目標を掲げているようです。

近畿大学の学生にとって「起業」は、就職に並ぶ選択肢となりつつあるわけです。
近畿大学の今後の展開が楽しみです。

ページトップへ

コストコ(COSTCO)戦略

2023年9月19日 火曜日

世界の小売業ランキング2023がデロイト トーマツ グループより発表されました。ランキングに反映されている売上の対象期間は2021年度(2021年7月1日~2022年6月30日までの会計年度)。
1位が安定のウォルマート、2位がECのAmazon、3位がコストコです。


上位3社はその前の年も変わらずですが、私が注目したのはここ数年で外資系小売会社の大半が日本進出後に撤退や苦戦をしてきた中で、唯一と言ってもよいほど日本の消費者の支持を集めて、躍進を続けている3位のコストコです。
決して安いわけではないのに、多くの人がショッピングカートにたくさん詰め込んで買い物をする姿を見るわけですが、日本での成功の要因が何なのか気になりますよね。

小売会社は国内外の市場で「標準化」や「チェーン化原理」に基づいて、規模の経済を確保することを原則としていることが多いのですが、小売会社の競争力をはかる上で最も重要なポイントの1つは「商品の品揃え×商品調達の構造」です。
どのような数量と内容の商品をどのような方法で調達しているのかを同時に見ていくことで、事業の構造と収益の構造を見極めることができるわけです。
前者は商品力そのもので、後者は収益構造に直結するサプライチェーンという企業全体の事業構造です。
コストコのような海外小売企業の最大の成功方程式はシンプルかつ明快で「進出国における消費者に対して低価格で商品を提供できる競争力を確保するために、短期のうちに現地メーカーとの直接取引体制を構築し、規模の経済を高めていけるか?」
ということがポイントとなるわけです。

では、コストコの「商品の品揃え×商品調達の構造」はどのようになっているのかと言うと、商品アイテム数は約4,000点となっており、その他の海外小売企業よりもはるかに少ない。
コンビニのように絞られたアイテム数であり、その4割を海外からの輸入という独自のサプライチェーンで賄っているそうです。
コストコの店舗は倉庫で商品陳列を工夫していて、とても多そうに見えるというマジックですね。
そして、コストコは国内で徐々に力をつけていくなかでメーカーとの直接取引も増やし、商品の調達構造でも万全の体制を構築しているそうです。


他の海外小売企業は「競争」や「脅威」とメーカーに受け止められたのに対して、コストコはメーカーとの「協調」や「棲み分け」であることを強調しながら、メーカーや進出先の地域での信頼を獲得していったというのが大きな特徴のようです。
実際、4,000点に絞られた商品展開によって、地域の商業とは相乗効果が生まれたことや、通常商品とは違うサイズの商品展開を行うことでメーカーとの間でも良好な関係が構築されているようです。
そして、業績を引き上げる別の要因は『会員制』制度です。


コストコの収益構造上の成功モデルは、売上を100としたとき、2~3%相当の収入を会費から確保しているそうで、粗利益率を意図的に12~13%程度におさえ、その分で競争力のある売価を実現。販売管理費率を10%程度におさえて3%程度の営業利益率を確保するという構造です。
通常、小売会社が20~30%程度、卸売会社が15%〜20%程度の粗利益率なのに対して、コストコは逆に粗利益率を低水準でおさえることでどこよりも安く、そのためにしっかりとした事業構造を構築しているのです。

当然、米国らしい大量売り、楽しい気持ちにさせる売り場などの演出も業績牽引の大きな要因ですが、4,000点にまで絞り込んだ品揃えをしっかりと「変化」させていることも高ポイントだと思います。常にカテゴリー毎の売上目標と結果を見て、月に200から300品目を入れ替えし、季節ごとの商品入れ替えもしっかり行っているようです。
売れ筋商品をきちんと管理し、死に筋商品は1カ月単位で売り場からはずしていくという商品管理が、魅力的な売り場づくりと魅力的な品揃えに貢献しているわけです。

収益構造まで戦略的に徹底しているところもすごいですよね。
まだまだコストコ人気は続きますね。

________________________
クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役  渡邉拓久

________________________
クオリア情報リンクページ


ページトップへ

外食業界の次の一手は?

2023年9月4日 月曜日

多くの企業が人手不足に苦しんでいますが、その中の代表例で痛手を被っているのが飲食業ではないでしょうか。今回は外食業界の抱える人材の問題点です。

飲食店は事業構造的にアルバイトの時給を上げることがなかなかできていないのが現状です。時給を上げることができないが故に、人が集まらないという悪循環に陥ってしまっているのです。
コロナ禍ではアルバイトを解雇した飲食店も多い状況で、他の業種で働く選択をしたケースも多かったようです。そうした人たちが外食業界に戻ってきたかというと・・・、そういうわけではないのでしょうね。

それでは、外食業界の人手不足はどれほど深刻なのかと言うと、東京都内の牛丼の「吉野家」の場合、アルバイトが集まらないために休業へ追い込まれてしまいました。
東京の平均時給と比べても遜色のない時給1,500円でアルバイトを募集していても、人が集まらない状況・・・。
実際、パート・アルバイトなどを含む非正社員の人手不足割合の業種別は「飲食店」が85.2%で、全業種の中で唯一80%を超えるほどの高さです。その背景にはパート・アルバイトなどを含む非正社員が就業者全体の70%以上を占めているという飲食店のビジネスモデルが関係しているのでしょう。(帝国データバンクより)

飲食店は利益が出にくいビジネスのため、人件費が高い正社員をたくさん雇うのは困難です。そこで時間給のパート・アルバイトを活用して、人件費をコントロールしながら運営してきたわけです。
マイナビの調査によればアルバイト先を選ぶポイントの1位が「給与の高さ」となっている中、他の職種と人材獲得競争が起きたら、外食業界が選ばれる可能性は低くなります。
ちなみに、外食業界の全国平均時給は1,065円となっており、それより下は「販売サービス関連」「アパレル・ファッション関連」「エステ・理美容」の3つしかないようです。

飲食店も時給を上げれば良いのですが現実的には困難で、その理由は大きく3つあります。
1つはコストの上昇です。
外食業界では人件費だけでなく、原材料費の高騰も大きな問題です。
専門的には原材料費(Food)と人件費(Labor)の頭文字をとって「FLコスト」と呼ばれていますが、飲食店を経営する上で重要な指標の1つです。
FLに「家賃(Rent)」を加えたFLRコスト比率を70%に抑えることが利益を確保するために欠かせないと昔から言われています。
家賃は固定費なのでコストの削減は困難なため、人件費と原材料費をコントロールする必要があるのですが、どちらも高騰しており従来のビジネスモデルが通用しない状況に追い込まれているのです。
値上がりの品目については「電気」「食用油」「ガス」がトップ3を占めていて、いずれも日常的に使うものなのでなかなか節約ができず、コスト増としてダイレクトに負担がのしかかっている状況のようです。
このコスト高の状況に対応して多くの飲食店で値上げをしたわけですが、現在起きているFLコストの上昇は、ビジネスモデルを変革させる程に大きな出来事だとも言えるでしょう。

2つ目は生産性の低さです。
コストが上昇していても生産性を向上させることができれば、それを吸収することもできるのですが、外食業界は生産性を向上させるのが難しい業界です。
そもそも「労働集約型」であるだけでなく “消費期限”のある物を扱うため在庫が持てない。
要するに、暇な時間にあらかじめサービスを作っておき、忙しくなったら提供するということができないため、生産性の向上に限界が生じるのです。
こうした外食業界ならではの特性のために利益が出にくいビジネス構造となり、アルバイトの賃金も低いままとなってしまう。結果として、それが離職率の高さに結び付き、人手不足の原因になっているというわけです。

3つ目は低価格の価値観。
物価は上がってきたと言われていますが、ご存知の通り今の日本は世界に比べるととても物価が安い。牛丼、ラーメンの価格も1,000円札があれば十分お釣りがくる状況。飲食店は価格が「安くて当たり前」という価値観があるのではないでしょうか。
ちなみにアメリカにある日本のラーメン店だと約20ドル+税金+チップ・・・ラーメン1杯が3,000円くらいします。
日本の物価は主要先進7カ国の中で突出して低いだけでなく、ここ数十年で物価が低迷し続けているのは日本だけなのです。(経済誌『エコノミスト』)
現に、値上げラッシュがあったとはいえ、日本人の価格に対する要求は厳しく、価格を据え置いている「サイゼリヤ」や「焼肉きんぐ」のようなお店が大きな支持を集めている状況ですね。
外食業界の時給の安さと人手不足は解決できないのか?というと、決してそうではないはずです。今までにないやり方を検討しないといけないですね。

________________________
クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役  渡邉拓久

ページトップへ

スマホを味方につけて

2023年7月25日 火曜日

皆さんは、スマホのカメラ機能ではなく、従来のカメラを使うことは最近ありましたか?
カメラの中でも最近「チェキ」が売れているようです。
確かに大型家電量販店や、東急ハンズ、LOFTなどにも販売ブースが必ずあります。
失礼ながら「今さらチェキ?まだ売れているの?!」と思っていたものの、まさかの好調な売れ行きのようでビックリしました。

ご存知だとは思いますが「チェキ」は、撮ったその場で現像された写真フィルムが出てくるというものです。
1998年に富士フイルムから発売され、今年2023年で発売25周年を迎えるそうです。
スマホの登場で、写真は誰にでも撮影できるものとなり、即座にデータをやりとりできるなど便利になりました。
スマホのカメラ機能の進化とともに、チェキのようなアナログカメラは衰退していきそうなものですが、そのアナログ感が逆に魅力となっていると言うのです。

近年はBluetoothでスマホと連携させることで、楽しみの幅を広げる製品を開発したそうです。
本体での撮影だけでなく、スマホで撮った写真の印刷もできるハイブリッドタイプと、スマホで撮った写真を印刷するためのスマホプリンタータイプの2種類があります。
特に好調なのは遊べるスマホプリンター「Link」シリーズ。初号機は2019年に発売され、ランダムもしくは簡単なテストの結果に基づく「相性診断機能」などが話題。
さらにはリニューアル製品として2022年に「INSTAX mini Link 2」を発売。
止まることなくアナログ版なりの機能を発展させているわけです。

この製品は単にプリンターとして使えるだけではないようで、プリンター本体をスプレーのように持っている姿を専用のスマホアプリで撮影することで、空間に絵や文字を描くことができるAR(拡張現実)機能を搭載しているというのです。凄い進化ですよね。
この新製品が牽引し、さらには俳優の広瀬すずさん、横浜流星さんが広告塔となりチェキで遊ぶ広告も功を奏してか、2022年国内での売り上げは前年度比3割増だったそうです。

また本体の機能だけでなく、チェキ専用フィルムのサイズ展開も拡がっています。
現状、定番のカードサイズに、2倍サイズのワイド、正方形のスクエアの3種類に拡大展開。
販売の伸びが著しいのはスクエアフィルムのようで、2022年度までに販売数量は約6倍で、さらなる販売数増加を見越しているそうです。

INSTAX mini Evo

最近では、若い女性が中心だった顧客層にも変化が出ているようで、男性層への販売の伸びが大きくなっているのが、クラシカルなデザインの「INSTAX mini Evo」。

かわいいカメラが中心のチェキのイメージを変えた製品(お値段も大人なお値段)です。

スマホの普及により、写真を撮るための機械である従来のカメラの販売台数は激減しました。
カメラはスマホの手軽さだけではないカメラ本来の撮影機能に長けていることは確かですが、プロやアマチュアカメラマン向け以外に大きな需要を作り出せていないことは、誰もが想像できると思います。

一方、チェキの使い心地や楽しさはスマホにはありません。
チェキの写真は、キーホルダーとしてバッグにぶら下げたり、透明なスマホカバーの中に挟んだり様々なカタチで活躍しているそうです。

チェキは今後も、スマホを味方につけて好調な売れ行きを維持しそうな感じですね!

_______________________________________
クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久

ページトップへ

スマホ業界に大きな波

2023年6月29日 木曜日

私達の日常生活に欠かせない存在のスマートフォン業界にも、大きな変化の波が来たようです。
スマートフォンの「arrows」シリーズやシニア向け「らくらくスマートフォン」シリーズを製造・販売するFCNT(株)が今年の5月末に民事再生法の適用を申請。
帝国データバンクの情報によると、親会社を含めたグループ計3社で負債総額は約1,200億円に上るそうです。

FCNTの主力製品である「らくらくホン」は、視力やタッチ操作に不安のある世代にもなじめる設計が特徴で、操作性においてもユーザーへの配慮があります。携帯電話の販売事業者にとっても、シニア世代をターゲットとした重要な位置付けの製品シリーズだったようです。
「らくらくホン」のような特徴のある製品を持つFCNTは、スマホ業界の「ニッチ」なポジショニングを獲得している企業ではないでしょうか。
そんなFCNTがなくなる今、事実上、国内のスマートフォンブランドはソニーの「Xperia」とシャープの「AQUOS」しか残っていないことになります。

10年くらい前は、かなり多くの選択肢があったことを記憶していますが、今やこんな状況なのですね。FCNTは直近まで通常の営業を行っていたようで、業界内でも突然の発表だったようです。
2022年からの急激な円安とスマートフォン市場の成熟化といった背景もあり、収支改善の道筋をつけることができなかったそうです。
そして、コロナ禍だった近年のスマホ業界全体は、半導体を中心とした部品不足が深刻でしたが、FCNTのようなメーカー側は為替変動などの影響を受けやすい状況だったことも、今回のタイミングでの破綻に繋がった可能性もありそうですね。

さらには、スマホの「実質価格」について、総務省の方針というメーカー側ではコントロールできない規制が絡んだこともマイナス要因に働いていると言われています。

“0円スマホ”が姿を消したことは皆さんもご存知ですよね。
日本国内の携帯電話契約者数が飽和するなか、顧客獲得のための過度な値引き競争が進むことを総務省が懸念して、通信料金と端末料金の明確な分離や、端末割引額を2万円までとする上限規制などの施策を導入したことで、「実質0円」スマホがなくなったわけです。
その結果、「実質0円」とすることで売れていた国内メーカーのミドルクラス端末の販売力が低下してきたという実態もあるようです。

その状況下で、大きな事業基盤を持つ価格競争力の高い中国メーカーが、日本の携帯電話事業者のラインナップに増加。国内スマートフォンメーカーを一段と苦しめる一因にもなっています。
そして決算状況は、2022年3月期時点で売上高約843億円に対し、売上原価は約679億円。売上原価はおよそ80.4%にもなっているという状況です。この原価の中には当然、国内での費用も含まれるわけですが、ドル建て調達の部品コストがあることも業種柄から想像できます。円安が進んだ2023年3月期の決算は未発表ですが、さらに原価率が悪化している可能性も大いに考えられます。少なからずここ数年、全く粗利が稼げていないということになります。

このような販売・財務状況の全体感からも、FCNTが自主再建を断念したのは不思議なことではないですね。
スマホ市場の中の「ニッチ」な地位を獲得してきた企業も、決して盤石ではないということです。皆さんも外部環境も含めて、先々の自社の展開を改めて見つめ直すことも必要かもしれませんね。

ページトップへ