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コストコ(COSTCO)戦略


世界の小売業ランキング2023がデロイト トーマツ グループより発表されました。ランキングに反映されている売上の対象期間は2021年度(2021年7月1日~2022年6月30日までの会計年度)。
1位が安定のウォルマート、2位がECのAmazon、3位がコストコです。





上位3社はその前の年も変わらずですが、私が注目したのはここ数年で外資系小売会社の大半が日本進出後に撤退や苦戦をしてきた中で、唯一と言ってもよいほど日本の消費者の支持を集めて、躍進を続けている3位のコストコです。
決して安いわけではないのに、多くの人がショッピングカートにたくさん詰め込んで買い物をする姿を見るわけですが、日本での成功の要因が何なのか気になりますよね。




小売会社は国内外の市場で「標準化」や「チェーン化原理」に基づいて、規模の経済を確保することを原則としていることが多いのですが、小売会社の競争力をはかる上で最も重要なポイントの1つは「商品の品揃え×商品調達の構造」です。
どのような数量と内容の商品をどのような方法で調達しているのかを同時に見ていくことで、事業の構造と収益の構造を見極めることができるわけです。
前者は商品力そのもので、後者は収益構造に直結するサプライチェーンという企業全体の事業構造です。
コストコのような海外小売企業の最大の成功方程式はシンプルかつ明快で「進出国における消費者に対して低価格で商品を提供できる競争力を確保するために、短期のうちに現地メーカーとの直接取引体制を構築し、規模の経済を高めていけるか?」
ということがポイントとなるわけです。




では、コストコの「商品の品揃え×商品調達の構造」はどのようになっているのかと言うと、商品アイテム数は約4,000点となっており、その他の海外小売企業よりもはるかに少ない。
コンビニのように絞られたアイテム数であり、その4割を海外からの輸入という独自のサプライチェーンで賄っているそうです。
コストコの店舗は倉庫で商品陳列を工夫していて、とても多そうに見えるというマジックですね。
そして、コストコは国内で徐々に力をつけていくなかでメーカーとの直接取引も増やし、商品の調達構造でも万全の体制を構築しているそうです。





他の海外小売企業は「競争」や「脅威」とメーカーに受け止められたのに対して、コストコはメーカーとの「協調」や「棲み分け」であることを強調しながら、メーカーや進出先の地域での信頼を獲得していったというのが大きな特徴のようです。
実際、4,000点に絞られた商品展開によって、地域の商業とは相乗効果が生まれたことや、通常商品とは違うサイズの商品展開を行うことでメーカーとの間でも良好な関係が構築されているようです。
そして、業績を引き上げる別の要因は『会員制』制度です。





コストコの収益構造上の成功モデルは、売上を100としたとき、2~3%相当の収入を会費から確保しているそうで、粗利益率を意図的に12~13%程度におさえ、その分で競争力のある売価を実現。販売管理費率を10%程度におさえて3%程度の営業利益率を確保するという構造です。
通常、小売会社が20~30%程度、卸売会社が15%〜20%程度の粗利益率なのに対して、コストコは逆に粗利益率を低水準でおさえることでどこよりも安く、そのためにしっかりとした事業構造を構築しているのです。




当然、米国らしい大量売り、楽しい気持ちにさせる売り場などの演出も業績牽引の大きな要因ですが、4,000点にまで絞り込んだ品揃えをしっかりと「変化」させていることも高ポイントだと思います。常にカテゴリー毎の売上目標と結果を見て、月に200から300品目を入れ替えし、季節ごとの商品入れ替えもしっかり行っているようです。
売れ筋商品をきちんと管理し、死に筋商品は1カ月単位で売り場からはずしていくという商品管理が、魅力的な売り場づくりと魅力的な品揃えに貢献しているわけです。




収益構造まで戦略的に徹底しているところもすごいですよね。
まだまだコストコ人気は続きますね。




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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役  渡邉拓久

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