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🔴ベアリング


さんは『ベアリング』というものをご存知ですか?
軸をなめらかに回転させるために用いるドーナツ状の部品なのですが、自動車や家電など身近な製品でよく使われています。

モノづくりに携わる方はご存知のように、ベアリングは「機械産業のコメ」とまで言われる重要な部品ですが、目に触れる場所に使われることが少ないため日常生活で認識されにくいと思います。
このコラムを書くにあたり《多くの経営者や経営陣の方々に魅力的な話題を》と意識しているのですが、今回は少しディープな『ベアリング』を取り上げてみたいと思います。




日本精工(NSK)がベアリングを提供したベイブレードの初期モデル。当時の子供に大人気だった。
引用:東洋経済ONLINE 11月14日 https://toyokeizai.net/articles/-/712248




ベアリングの国内シェア1位を誇る日本精工(NSK)の子会社(NSKマイクロプレシジョン株式会社)は子供向け玩具事業に取り組んでいて、具体的には競技用のコマやヨーヨー専用の高性能ベアリングを開発し、毎年のように新作を発表しているそうです。
私にとって玩具に使われるベアリングと言えば、子供の頃に流行ったミニ四駆のコーナリング用の部品(ガイドローラー)ですが、実際にミニ四駆市場にも同社は注力しています。

今年4月に幕張メッセで開催された大会では、3周で計20m程の専用コースを1秒台で走破する記録も出たそうですが、この大会に同社も協賛していて、出場した人気ユーチューバー10人に約30種類のベアリングを提供し、ガイドローラーに搭載してもらっていたそうです。同大会副賞は《製作用のベアリング1年分》と《フェンスカー(注1)専用のベアリングを一緒に開発する権利》で、受賞者を自社工場(神奈川県藤沢市)に招いて共同研究を進め年内の商品化を目指す、という夢のような内容。ファンや関係者の巻き込みも上手ですよね。
(注1)フェンスカー:ミニ四駆の速さを突き詰めた競技




日本精工(NSK)は、過去に2度の玩具に関する大きな成功体験があり、一つはタカラトミーがベーゴマを現代風にアレンジした玩具「ベイブレード」。ベアリングを提供した初期モデルが大ヒットし全国で売り切れ続出。パッケージにもNSKの3文字が大きく印刷されて知名度向上に大きく貢献しました。
二つ目は日本精工(NSK)が出展した展示会で「ヨーヨー向けの高性能なベアリングが欲しい」と、競技者から相談されたことがきっかけの競技用ヨーヨーだそうです。

また、2010年には「スリーパー」という空転時間の長さを競う競技(そんなのがあるのですね)で、当時の世界新記録となる21分21秒25を叩きだしたヨーヨーは日本精工(NSK)が開発したものでした。
最近のヒット作は「サターンスピナー」という玩具で、少し前に大流行したハンドスピナーの最上位モデルで、価格は約1万7000円…結構しますよね。
これは日本精工(NSK)の技術者が一つ一つ手作りし、一般的にハンドスピナーの回転時間の平均は約3~4分で長くても6分程度ですが、12分近くも回転し続けます。約700個の限定生産品は即完売で、フリマサイトでは一時、7万~9万円のプレミア価格で取引されたそうです。

日本精工(NSK)の子供向け玩具事業は、販売数は多くないものの黒字化を達成していて、主力商品である自動車や家電向けのベアリングとは比較にならないレベルだそうですが、売上だけではない玩具販売の目的があるようです。
それは、日本を支えるモノづくり産業の担い手の確保。

前記の幕張メッセの大会で、生放送中の視聴者アンケートでは日本精工(NSK)の知名度は約3割でしたが、地味な部品であるベアリングでも人を惹きつける玩具をフックにすれば、幅広いターゲットにアプローチできるわけです。
今後は、こういった事業や玩具イベント活動を通し、日本を支えるモノづくり産業の“担い手確保”のためにも、違った角度で裾野を広げていく必要がありますね。




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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント 渡邉拓久

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