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スマホ業界に大きな波


私達の日常生活に欠かせない存在のスマートフォン業界にも、大きな変化の波が来たようです。
スマートフォンの「arrows」シリーズやシニア向け「らくらくスマートフォン」シリーズを製造・販売するFCNT(株)が今年の5月末に民事再生法の適用を申請。
帝国データバンクの情報によると、親会社を含めたグループ計3社で負債総額は約1,200億円に上るそうです。




FCNTの主力製品である「らくらくホン」は、視力やタッチ操作に不安のある世代にもなじめる設計が特徴で、操作性においてもユーザーへの配慮があります。携帯電話の販売事業者にとっても、シニア世代をターゲットとした重要な位置付けの製品シリーズだったようです。
「らくらくホン」のような特徴のある製品を持つFCNTは、スマホ業界の「ニッチ」なポジショニングを獲得している企業ではないでしょうか。
そんなFCNTがなくなる今、事実上、国内のスマートフォンブランドはソニーの「Xperia」とシャープの「AQUOS」しか残っていないことになります。




10年くらい前は、かなり多くの選択肢があったことを記憶していますが、今やこんな状況なのですね。FCNTは直近まで通常の営業を行っていたようで、業界内でも突然の発表だったようです。
2022年からの急激な円安とスマートフォン市場の成熟化といった背景もあり、収支改善の道筋をつけることができなかったそうです。
そして、コロナ禍だった近年のスマホ業界全体は、半導体を中心とした部品不足が深刻でしたが、FCNTのようなメーカー側は為替変動などの影響を受けやすい状況だったことも、今回のタイミングでの破綻に繋がった可能性もありそうですね。




さらには、スマホの「実質価格」について、総務省の方針というメーカー側ではコントロールできない規制が絡んだこともマイナス要因に働いていると言われています。




“0円スマホ”が姿を消したことは皆さんもご存知ですよね。
日本国内の携帯電話契約者数が飽和するなか、顧客獲得のための過度な値引き競争が進むことを総務省が懸念して、通信料金と端末料金の明確な分離や、端末割引額を2万円までとする上限規制などの施策を導入したことで、「実質0円」スマホがなくなったわけです。
その結果、「実質0円」とすることで売れていた国内メーカーのミドルクラス端末の販売力が低下してきたという実態もあるようです。




その状況下で、大きな事業基盤を持つ価格競争力の高い中国メーカーが、日本の携帯電話事業者のラインナップに増加。国内スマートフォンメーカーを一段と苦しめる一因にもなっています。
そして決算状況は、2022年3月期時点で売上高約843億円に対し、売上原価は約679億円。売上原価はおよそ80.4%にもなっているという状況です。この原価の中には当然、国内での費用も含まれるわけですが、ドル建て調達の部品コストがあることも業種柄から想像できます。円安が進んだ2023年3月期の決算は未発表ですが、さらに原価率が悪化している可能性も大いに考えられます。少なからずここ数年、全く粗利が稼げていないということになります。




このような販売・財務状況の全体感からも、FCNTが自主再建を断念したのは不思議なことではないですね。
スマホ市場の中の「ニッチ」な地位を獲得してきた企業も、決して盤石ではないということです。皆さんも外部環境も含めて、先々の自社の展開を改めて見つめ直すことも必要かもしれませんね。




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