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🔴渡邉代表コラム【エレッセの再挑戦】

2024年1月31日 水曜日

老舗企業も世の中の大きな変化に対して「抜本的な変化」を求められる流れがきているようです。
今回はその一例のお話として、イタリア発祥の老舗ブランド「エレッセ」についてです。
ほとんどの方がご存じだと思いますが、テニスで愛用されているカラフルなスポーツブランドというイメージで「ハーフボール」のロゴが目に浮かぶブランドですよね。

エレッセは日本におけるバブル期の代表的なブランドで、1980年代から大学生や若い世代の社会人の間で大流行したスキーやテニスで人気のスポーツブランドでした。
スキーウェアとテニスウェアは当時の若者たちから絶大な人気を集め、飛ぶように商品が売れたそうです。
街中では、エレッセのパーカーやトレーナー、ニットなどを好んで着る若者で溢れていました。現在国内では、以前にこのコラムで取り上げた「ザ・ノース・フェイス」で有名なゴールドウインが権利を有して事業を展開しています。

当時から30年の間に、エレッセは市場の急激な縮小を受けて、2011年にスキーウェアから撤退。残ったテニスとアパレルも売上は年々減少し、特に近年は販売不振が極まり、事業の継続が難しい状況にまで追い込まれていたようです。
今回の全面刷新は、まさに国内における「エレッセ」のブランドの存続をかけ、2023年の春にブランドの再スタートに踏み切るというものでした。 
エレッセの元々の定番は原色を用いたカラフルな商品でしたが、そのイメージを一変。ブランドマークの「ハーフボールロゴ」の使用もやめたようです。
ブランドの象徴でもあるハーフボールのロゴをやめるぐらいの刷新とは、かなり大きな賭けですよね。
最新ウェアでは、自然界からインスピレーションを受けた“くすみカラー”を全面的に採用し、無地のミニマルデザインを基本にしたのです。

エレッセの公式サイトで商品を確認してみるとよく分かりますが、これまでのエレッセのイメージとは明らかに違う“オシャレ”な感じです。今までの常識にとらわれない全く新しい価値を持ったテニスウェアを提案することを目指したようです。この路線変更の裏には徹底的な市場調査があったようです。
他社のブランドを含めて既存のテニスウェアはどのブランドも似たようなウェアばかりで選択肢がなく、ファッション感度の高い女性からは、ヨガなど他用途のスポーツウェアを着用しているとの声が多かったそうです。

そこでエレッセは『スポーツウェアの美しさにこだわる』を新たなコンセプトとし、人間が感じる色の印象について大学と共同研究し、商品のデザインに反映。新エレッセが採用した《ややくすみがかった》特徴的なカラーは、着用した人がもっとも美しく見えるよう考え抜かれた色だそうです。
デザイン以外でも、UVカットや通気性などの機能は当然として、テニスのプレー中の動きを解析して、ラケットが振りやすく快適に動けるパターン設計を採用。
また、体を美しく見せるカッティングにも配慮し、素材自体も肌触りや質感のよいものを厳選。一部の商品はイタリアの特殊な機械で編んだ高級生地を使用するこだわりだそうです。

その分、価格設定も高くし、半袖シャツは1万円以上のものが大半(主要ブランドの中心価格帯が7,000〜9,000円台)のようです。もともと安い商品を売るブランドではなかったようですが、より高価格帯にシフトし、高くてもおしゃれで上質なものを求める層へ明確にターゲットを絞ったようです。
長年の不振が続く中でエレッセのブランド直営店はなくなり、現在の主販路は公式オンラインと一部の店舗に限られています。

事業の存続をかけて思い切ったブランド刷新に踏み切り、独自の路線を打ち出したエレッセ。このブランドが提案する新たなテニスウェアが、おしゃれなユーザーに受け入れられるか注目していきたいですね。



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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久



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BeReal

2023年12月26日 火曜日

皆さんはSNSをどれだけ使いこなしていますか?
私は特にInstagramやFacebook、Xなど個人が自ら情報発信するものは見る専門(こういう方が多いでしょうか)ですね。たくさんの情報を進んで発信されている方々には頭が下がります。
そんな昨今、ニュースで目にしたのは《SNS疲れを感じる若者》が増えてきているという情報です。生活の一部として自由自在に操るSNS世代でも、そう思うことがあるわけですね。
そんなSNS疲れを感じる若者を中心に人気が急上昇しているのが「BeReal(ビーリアル)」という2020年にフランスで開発されたアプリサービスです。

引用:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_63cf9259e4b0c8e3fc797034

文字通り《リアルを共有するSNS》で、よく聞く『映える』ことも『盛る』ことも出来ない仕組みになっているというものです。フランスやアメリカの大学生を中心に人気が出たそうですが、アクティブユーザーは2,000万人超えと利用者が増えているそうです。
日本国内でも、App Storeの「ソーシャルネットワーキング」内で2位、Google Playストアでは「ソーシャルネットワーク」内で4位(2023年11月時点)という順位なので人気ぶりがうかがえます。

BeRealを始めると1日1回通知が来るようで、早朝もあれば昼間や夜間の時もあり、毎日バラバラの時刻に一斉に送られて来ます。通知が来たら、2分以内に撮影して投稿しなければいけません。時も場所も選べませんので、寝起きでも、歩いている時でも、時間によってはスッピンの顔や散らかった部屋が写されることもあります。まさにリアルですよね。
2分以内に投稿すれば、ボーナスとしてその後2回投稿が可能に。反対に投稿しなければ友達の投稿は見られず、後で投稿すると遅れた時間が明記されるようです。
友達の投稿には、Realmojiというスタンプやコメントでリアクションができます。
このスタンプは「いいね」なら手でポーズをして撮影をしたり、驚いた顔や悲しい顔などを自撮りしたりして自分だけのスタンプを作成できるようで、投稿にはその人の友達の顔がスタンプになって並ぶという、文字通り「リアル」。


では、このBeRealは従来のSNSサービスと何が違うのか?ということになります。
『リアルを共有するSNS』にするために、BeRealには数多くの制限が設けられているようです。それは、


これまでのSNSとは異なる点が多いBeRealですが、何が若い人を惹きつけているのでしょうか。
それはBeRealの『ゲーム性』と『手軽さ』だと言われています。
今から2分以内に何かを撮影しなければならないという“緊迫感”に、本人も周りにいる友達も盛り上がるということです。
散らかった部屋が写っていても、ぼかす必要もありません。
さらに、投稿した写真は1日で消えるのでじっくり見返されることもなく「いいね数」「フォロワー数」などの表示はないため、人気度を測られたり競うこともないわけです。

他のSNSの形態そのものがBeRealのような機能に変化していくわけではないと思いますが、Instagramのストーリーズが人気になったように、親しい人とクローズドな空間で深い交流をする、という潮流も生まれてきたと捉えると良いのでしょうか。
リアルな友達とリアルな交流ができるという、今までの流れとは明らかに違うBeRealがどこまで世間に浸透していくのか、引き続き注目していきたいと思います。



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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久

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ベアリング

2023年12月7日 木曜日

さんは『ベアリング』というものをご存知ですか?
軸をなめらかに回転させるために用いるドーナツ状の部品なのですが、自動車や家電など身近な製品でよく使われています。

モノづくりに携わる方はご存知のように、ベアリングは「機械産業のコメ」とまで言われる重要な部品ですが、目に触れる場所に使われることが少ないため日常生活で認識されにくいと思います。
このコラムを書くにあたり《多くの経営者や経営陣の方々に魅力的な話題を》と意識しているのですが、今回は少しディープな『ベアリング』を取り上げてみたいと思います。

日本精工(NSK)がベアリングを提供したベイブレードの初期モデル。当時の子供に大人気だった。
引用:東洋経済ONLINE 11月14日 https://toyokeizai.net/articles/-/712248

ベアリングの国内シェア1位を誇る日本精工(NSK)の子会社(NSKマイクロプレシジョン株式会社)は子供向け玩具事業に取り組んでいて、具体的には競技用のコマやヨーヨー専用の高性能ベアリングを開発し、毎年のように新作を発表しているそうです。
私にとって玩具に使われるベアリングと言えば、子供の頃に流行ったミニ四駆のコーナリング用の部品(ガイドローラー)ですが、実際にミニ四駆市場にも同社は注力しています。

今年4月に幕張メッセで開催された大会では、3周で計20m程の専用コースを1秒台で走破する記録も出たそうですが、この大会に同社も協賛していて、出場した人気ユーチューバー10人に約30種類のベアリングを提供し、ガイドローラーに搭載してもらっていたそうです。同大会副賞は《製作用のベアリング1年分》と《フェンスカー(注1)専用のベアリングを一緒に開発する権利》で、受賞者を自社工場(神奈川県藤沢市)に招いて共同研究を進め年内の商品化を目指す、という夢のような内容。ファンや関係者の巻き込みも上手ですよね。
(注1)フェンスカー:ミニ四駆の速さを突き詰めた競技

日本精工(NSK)は、過去に2度の玩具に関する大きな成功体験があり、一つはタカラトミーがベーゴマを現代風にアレンジした玩具「ベイブレード」。ベアリングを提供した初期モデルが大ヒットし全国で売り切れ続出。パッケージにもNSKの3文字が大きく印刷されて知名度向上に大きく貢献しました。
二つ目は日本精工(NSK)が出展した展示会で「ヨーヨー向けの高性能なベアリングが欲しい」と、競技者から相談されたことがきっかけの競技用ヨーヨーだそうです。

また、2010年には「スリーパー」という空転時間の長さを競う競技(そんなのがあるのですね)で、当時の世界新記録となる21分21秒25を叩きだしたヨーヨーは日本精工(NSK)が開発したものでした。
最近のヒット作は「サターンスピナー」という玩具で、少し前に大流行したハンドスピナーの最上位モデルで、価格は約1万7000円…結構しますよね。
これは日本精工(NSK)の技術者が一つ一つ手作りし、一般的にハンドスピナーの回転時間の平均は約3~4分で長くても6分程度ですが、12分近くも回転し続けます。約700個の限定生産品は即完売で、フリマサイトでは一時、7万~9万円のプレミア価格で取引されたそうです。

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キンキュバ

2023年11月2日 木曜日

皆さんはKINCUBA(キンキュバ)を知っていますか?
「KINCUBA(キンキュバ)」とは、“KINDAI”と“INCUBATION”を組み合わせた造語で、近畿大学における学生起業家のための育成プログラムのことです。

ご存知の方も多いと思いますが、近畿大学と言えば何かと面白い取り組みをする大学ですね。
以前このコラムでも取り上げましたが、世界で初めて完全養殖に成功した「近大マグロ」が特に有名です。
まさにこの近大マグロが他大学に先駆けて『大学発スタートアップ』の成功例を生み出したと言えます。
しかしながらその後は起業数が伸び悩んだそうで、2022年度に50社(東京大学371社、大阪大学191社、立命館大学110社)と他大学から大きく後れをとっていたようです。(経済産業省調査)

ちなみに『スタートアップ』自体は日本政府も推奨する取り組みであり、岸田政権が旗を振る「スタートアップ育成5カ年計画」では2027年までにスタートアップ10万社の創出という目標を掲げています。その達成に向けて大きな起爆剤的な役割を担うのがこの大学発スタートアップでしょう。2022年度の大学発スタートアップ数は前年比477社増の3,782社と、過去最多の増加数を記録しているようです。(経済産業省調査)

学校法人近畿大学KINCUBA公式サイトより

近畿大学は、2022年にスタートアップ創出拠点の「KINCUBA Basecamp(キンキュバベースキャンプ)」を開設。
施設は月額500円で24時間利用が可能らしく、打ち合わせスペース、食品系の商品開発にも使えるオープンキッチンや、イベントスペースも備えているそうです。
法人登記をする際には同施設の住所を使うこともできるようで、コワーキングスペースより整った環境ですよね。

学生向けのイベントを週に何回も開催しているようで、堀江貴文さんを招いて事業計画を学生が披露する会もあったそうです。そこから得られるアドバイスは学生もテンションが上がりますよね。
2023年の起業は加速しているそうで、スイーツやラーメンの販売、昆虫食普及イベントの運営など業態は多様だそうです。

他大学では研究室での研究成果を基に教員などが起業するケースが多いようで、学生発の起業が中心の近畿大学は真の大学発スタートアップですよね。
近畿大学の狙いは、受験生などへの「大学発スタートアップと言えば近畿大学」というブランドイメージの浸透を図りたい想いも大いにありそうです。

学生も、これまでは同志社大学や立命館大学を目指していたけど『起業するなら近大』という情報に惹かれて、近大を選んだというケースが増えているようです。
実際、卒業までに起業してもしなくてもいいし、起業せずに就職したり大学院に行ってもいいわけですが、キンキュバで学んだことは就職活動時のアピールポイントにもなり、更には就職した後でも役立つわけです。

就職面接で、学生時代に注力してきたことの質問に対して『学生起業しました』『起業に向けて財務や事業立案を勉強しました』と答えられる学生は、他の学生と大きな差をつけられるわけですよね。
大学のオープンキャンパスでは起業した学生の紹介や起業の相談会も実施したり、キンキュバベースキャンプの見学会や学生による事業アイデア発表会も開催したりしているそうです。こうしたプログラムやイベントを通して「起業=近大」というイメージが定着しつつあるのです。
さらに踏み込んだ取り組みが、2023年に開講したばかりの起業家を育成する修士課程「実学社会起業イノベーション学位プログラム」というもの。


財務などの基礎知識の習得に加え、起業家やVC(ベンチャーキャピタル)との対話、スタートアップでのインターンシップを通して、2年間で自身の事業計画を試行錯誤しながら磨き上げていく。最終年度には修士論文ではなく、ビジネスプランを提出。
これが「特定の課題についての研究成果」として評価されるのです。実践的でとても学び甲斐がありそうですよね。私も大学院時代にこんな環境だったら、もっと違った発想や道を歩んでいたのかもしれないです・・・笑


弊社も今年、名古屋造形大学さんと産学連携プロジェクトをスタートさせましたが、学生の柔軟な発想にはとても大きな可能性を感じています。学生だからこそできる挑戦もありますよね!
近畿大学は創立100周年を迎える2025年度までに、同大学発のスタートアップを100社創出する目標を掲げているようです。

近畿大学の学生にとって「起業」は、就職に並ぶ選択肢となりつつあるわけです。
近畿大学の今後の展開が楽しみです。

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コストコ(COSTCO)戦略

2023年9月19日 火曜日

世界の小売業ランキング2023がデロイト トーマツ グループより発表されました。ランキングに反映されている売上の対象期間は2021年度(2021年7月1日~2022年6月30日までの会計年度)。
1位が安定のウォルマート、2位がECのAmazon、3位がコストコです。


上位3社はその前の年も変わらずですが、私が注目したのはここ数年で外資系小売会社の大半が日本進出後に撤退や苦戦をしてきた中で、唯一と言ってもよいほど日本の消費者の支持を集めて、躍進を続けている3位のコストコです。
決して安いわけではないのに、多くの人がショッピングカートにたくさん詰め込んで買い物をする姿を見るわけですが、日本での成功の要因が何なのか気になりますよね。

小売会社は国内外の市場で「標準化」や「チェーン化原理」に基づいて、規模の経済を確保することを原則としていることが多いのですが、小売会社の競争力をはかる上で最も重要なポイントの1つは「商品の品揃え×商品調達の構造」です。
どのような数量と内容の商品をどのような方法で調達しているのかを同時に見ていくことで、事業の構造と収益の構造を見極めることができるわけです。
前者は商品力そのもので、後者は収益構造に直結するサプライチェーンという企業全体の事業構造です。
コストコのような海外小売企業の最大の成功方程式はシンプルかつ明快で「進出国における消費者に対して低価格で商品を提供できる競争力を確保するために、短期のうちに現地メーカーとの直接取引体制を構築し、規模の経済を高めていけるか?」
ということがポイントとなるわけです。

では、コストコの「商品の品揃え×商品調達の構造」はどのようになっているのかと言うと、商品アイテム数は約4,000点となっており、その他の海外小売企業よりもはるかに少ない。
コンビニのように絞られたアイテム数であり、その4割を海外からの輸入という独自のサプライチェーンで賄っているそうです。
コストコの店舗は倉庫で商品陳列を工夫していて、とても多そうに見えるというマジックですね。
そして、コストコは国内で徐々に力をつけていくなかでメーカーとの直接取引も増やし、商品の調達構造でも万全の体制を構築しているそうです。


他の海外小売企業は「競争」や「脅威」とメーカーに受け止められたのに対して、コストコはメーカーとの「協調」や「棲み分け」であることを強調しながら、メーカーや進出先の地域での信頼を獲得していったというのが大きな特徴のようです。
実際、4,000点に絞られた商品展開によって、地域の商業とは相乗効果が生まれたことや、通常商品とは違うサイズの商品展開を行うことでメーカーとの間でも良好な関係が構築されているようです。
そして、業績を引き上げる別の要因は『会員制』制度です。


コストコの収益構造上の成功モデルは、売上を100としたとき、2~3%相当の収入を会費から確保しているそうで、粗利益率を意図的に12~13%程度におさえ、その分で競争力のある売価を実現。販売管理費率を10%程度におさえて3%程度の営業利益率を確保するという構造です。
通常、小売会社が20~30%程度、卸売会社が15%〜20%程度の粗利益率なのに対して、コストコは逆に粗利益率を低水準でおさえることでどこよりも安く、そのためにしっかりとした事業構造を構築しているのです。

当然、米国らしい大量売り、楽しい気持ちにさせる売り場などの演出も業績牽引の大きな要因ですが、4,000点にまで絞り込んだ品揃えをしっかりと「変化」させていることも高ポイントだと思います。常にカテゴリー毎の売上目標と結果を見て、月に200から300品目を入れ替えし、季節ごとの商品入れ替えもしっかり行っているようです。
売れ筋商品をきちんと管理し、死に筋商品は1カ月単位で売り場からはずしていくという商品管理が、魅力的な売り場づくりと魅力的な品揃えに貢献しているわけです。

収益構造まで戦略的に徹底しているところもすごいですよね。
まだまだコストコ人気は続きますね。

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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役  渡邉拓久

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外食業界の次の一手は?

2023年9月4日 月曜日

多くの企業が人手不足に苦しんでいますが、その中の代表例で痛手を被っているのが飲食業ではないでしょうか。今回は外食業界の抱える人材の問題点です。

飲食店は事業構造的にアルバイトの時給を上げることがなかなかできていないのが現状です。時給を上げることができないが故に、人が集まらないという悪循環に陥ってしまっているのです。
コロナ禍ではアルバイトを解雇した飲食店も多い状況で、他の業種で働く選択をしたケースも多かったようです。そうした人たちが外食業界に戻ってきたかというと・・・、そういうわけではないのでしょうね。

それでは、外食業界の人手不足はどれほど深刻なのかと言うと、東京都内の牛丼の「吉野家」の場合、アルバイトが集まらないために休業へ追い込まれてしまいました。
東京の平均時給と比べても遜色のない時給1,500円でアルバイトを募集していても、人が集まらない状況・・・。
実際、パート・アルバイトなどを含む非正社員の人手不足割合の業種別は「飲食店」が85.2%で、全業種の中で唯一80%を超えるほどの高さです。その背景にはパート・アルバイトなどを含む非正社員が就業者全体の70%以上を占めているという飲食店のビジネスモデルが関係しているのでしょう。(帝国データバンクより)

飲食店は利益が出にくいビジネスのため、人件費が高い正社員をたくさん雇うのは困難です。そこで時間給のパート・アルバイトを活用して、人件費をコントロールしながら運営してきたわけです。
マイナビの調査によればアルバイト先を選ぶポイントの1位が「給与の高さ」となっている中、他の職種と人材獲得競争が起きたら、外食業界が選ばれる可能性は低くなります。
ちなみに、外食業界の全国平均時給は1,065円となっており、それより下は「販売サービス関連」「アパレル・ファッション関連」「エステ・理美容」の3つしかないようです。

飲食店も時給を上げれば良いのですが現実的には困難で、その理由は大きく3つあります。
1つはコストの上昇です。
外食業界では人件費だけでなく、原材料費の高騰も大きな問題です。
専門的には原材料費(Food)と人件費(Labor)の頭文字をとって「FLコスト」と呼ばれていますが、飲食店を経営する上で重要な指標の1つです。
FLに「家賃(Rent)」を加えたFLRコスト比率を70%に抑えることが利益を確保するために欠かせないと昔から言われています。
家賃は固定費なのでコストの削減は困難なため、人件費と原材料費をコントロールする必要があるのですが、どちらも高騰しており従来のビジネスモデルが通用しない状況に追い込まれているのです。
値上がりの品目については「電気」「食用油」「ガス」がトップ3を占めていて、いずれも日常的に使うものなのでなかなか節約ができず、コスト増としてダイレクトに負担がのしかかっている状況のようです。
このコスト高の状況に対応して多くの飲食店で値上げをしたわけですが、現在起きているFLコストの上昇は、ビジネスモデルを変革させる程に大きな出来事だとも言えるでしょう。

2つ目は生産性の低さです。
コストが上昇していても生産性を向上させることができれば、それを吸収することもできるのですが、外食業界は生産性を向上させるのが難しい業界です。
そもそも「労働集約型」であるだけでなく “消費期限”のある物を扱うため在庫が持てない。
要するに、暇な時間にあらかじめサービスを作っておき、忙しくなったら提供するということができないため、生産性の向上に限界が生じるのです。
こうした外食業界ならではの特性のために利益が出にくいビジネス構造となり、アルバイトの賃金も低いままとなってしまう。結果として、それが離職率の高さに結び付き、人手不足の原因になっているというわけです。

3つ目は低価格の価値観。
物価は上がってきたと言われていますが、ご存知の通り今の日本は世界に比べるととても物価が安い。牛丼、ラーメンの価格も1,000円札があれば十分お釣りがくる状況。飲食店は価格が「安くて当たり前」という価値観があるのではないでしょうか。
ちなみにアメリカにある日本のラーメン店だと約20ドル+税金+チップ・・・ラーメン1杯が3,000円くらいします。
日本の物価は主要先進7カ国の中で突出して低いだけでなく、ここ数十年で物価が低迷し続けているのは日本だけなのです。(経済誌『エコノミスト』)
現に、値上げラッシュがあったとはいえ、日本人の価格に対する要求は厳しく、価格を据え置いている「サイゼリヤ」や「焼肉きんぐ」のようなお店が大きな支持を集めている状況ですね。
外食業界の時給の安さと人手不足は解決できないのか?というと、決してそうではないはずです。今までにないやり方を検討しないといけないですね。

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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役  渡邉拓久

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スマホを味方につけて

2023年7月25日 火曜日

皆さんは、スマホのカメラ機能ではなく、従来のカメラを使うことは最近ありましたか?
カメラの中でも最近「チェキ」が売れているようです。
確かに大型家電量販店や、東急ハンズ、LOFTなどにも販売ブースが必ずあります。
失礼ながら「今さらチェキ?まだ売れているの?!」と思っていたものの、まさかの好調な売れ行きのようでビックリしました。

ご存知だとは思いますが「チェキ」は、撮ったその場で現像された写真フィルムが出てくるというものです。
1998年に富士フイルムから発売され、今年2023年で発売25周年を迎えるそうです。
スマホの登場で、写真は誰にでも撮影できるものとなり、即座にデータをやりとりできるなど便利になりました。
スマホのカメラ機能の進化とともに、チェキのようなアナログカメラは衰退していきそうなものですが、そのアナログ感が逆に魅力となっていると言うのです。

近年はBluetoothでスマホと連携させることで、楽しみの幅を広げる製品を開発したそうです。
本体での撮影だけでなく、スマホで撮った写真の印刷もできるハイブリッドタイプと、スマホで撮った写真を印刷するためのスマホプリンタータイプの2種類があります。
特に好調なのは遊べるスマホプリンター「Link」シリーズ。初号機は2019年に発売され、ランダムもしくは簡単なテストの結果に基づく「相性診断機能」などが話題。
さらにはリニューアル製品として2022年に「INSTAX mini Link 2」を発売。
止まることなくアナログ版なりの機能を発展させているわけです。

この製品は単にプリンターとして使えるだけではないようで、プリンター本体をスプレーのように持っている姿を専用のスマホアプリで撮影することで、空間に絵や文字を描くことができるAR(拡張現実)機能を搭載しているというのです。凄い進化ですよね。
この新製品が牽引し、さらには俳優の広瀬すずさん、横浜流星さんが広告塔となりチェキで遊ぶ広告も功を奏してか、2022年国内での売り上げは前年度比3割増だったそうです。

また本体の機能だけでなく、チェキ専用フィルムのサイズ展開も拡がっています。
現状、定番のカードサイズに、2倍サイズのワイド、正方形のスクエアの3種類に拡大展開。
販売の伸びが著しいのはスクエアフィルムのようで、2022年度までに販売数量は約6倍で、さらなる販売数増加を見越しているそうです。

INSTAX mini Evo

最近では、若い女性が中心だった顧客層にも変化が出ているようで、男性層への販売の伸びが大きくなっているのが、クラシカルなデザインの「INSTAX mini Evo」。

かわいいカメラが中心のチェキのイメージを変えた製品(お値段も大人なお値段)です。

スマホの普及により、写真を撮るための機械である従来のカメラの販売台数は激減しました。
カメラはスマホの手軽さだけではないカメラ本来の撮影機能に長けていることは確かですが、プロやアマチュアカメラマン向け以外に大きな需要を作り出せていないことは、誰もが想像できると思います。

一方、チェキの使い心地や楽しさはスマホにはありません。
チェキの写真は、キーホルダーとしてバッグにぶら下げたり、透明なスマホカバーの中に挟んだり様々なカタチで活躍しているそうです。

チェキは今後も、スマホを味方につけて好調な売れ行きを維持しそうな感じですね!

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クオリアグローバルマネジメント株式会社
代表取締役/経営コンサルタント
渡邉拓久

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スマホ業界に大きな波

2023年6月29日 木曜日

私達の日常生活に欠かせない存在のスマートフォン業界にも、大きな変化の波が来たようです。
スマートフォンの「arrows」シリーズやシニア向け「らくらくスマートフォン」シリーズを製造・販売するFCNT(株)が今年の5月末に民事再生法の適用を申請。
帝国データバンクの情報によると、親会社を含めたグループ計3社で負債総額は約1,200億円に上るそうです。

FCNTの主力製品である「らくらくホン」は、視力やタッチ操作に不安のある世代にもなじめる設計が特徴で、操作性においてもユーザーへの配慮があります。携帯電話の販売事業者にとっても、シニア世代をターゲットとした重要な位置付けの製品シリーズだったようです。
「らくらくホン」のような特徴のある製品を持つFCNTは、スマホ業界の「ニッチ」なポジショニングを獲得している企業ではないでしょうか。
そんなFCNTがなくなる今、事実上、国内のスマートフォンブランドはソニーの「Xperia」とシャープの「AQUOS」しか残っていないことになります。

10年くらい前は、かなり多くの選択肢があったことを記憶していますが、今やこんな状況なのですね。FCNTは直近まで通常の営業を行っていたようで、業界内でも突然の発表だったようです。
2022年からの急激な円安とスマートフォン市場の成熟化といった背景もあり、収支改善の道筋をつけることができなかったそうです。
そして、コロナ禍だった近年のスマホ業界全体は、半導体を中心とした部品不足が深刻でしたが、FCNTのようなメーカー側は為替変動などの影響を受けやすい状況だったことも、今回のタイミングでの破綻に繋がった可能性もありそうですね。

さらには、スマホの「実質価格」について、総務省の方針というメーカー側ではコントロールできない規制が絡んだこともマイナス要因に働いていると言われています。

“0円スマホ”が姿を消したことは皆さんもご存知ですよね。
日本国内の携帯電話契約者数が飽和するなか、顧客獲得のための過度な値引き競争が進むことを総務省が懸念して、通信料金と端末料金の明確な分離や、端末割引額を2万円までとする上限規制などの施策を導入したことで、「実質0円」スマホがなくなったわけです。
その結果、「実質0円」とすることで売れていた国内メーカーのミドルクラス端末の販売力が低下してきたという実態もあるようです。

その状況下で、大きな事業基盤を持つ価格競争力の高い中国メーカーが、日本の携帯電話事業者のラインナップに増加。国内スマートフォンメーカーを一段と苦しめる一因にもなっています。
そして決算状況は、2022年3月期時点で売上高約843億円に対し、売上原価は約679億円。売上原価はおよそ80.4%にもなっているという状況です。この原価の中には当然、国内での費用も含まれるわけですが、ドル建て調達の部品コストがあることも業種柄から想像できます。円安が進んだ2023年3月期の決算は未発表ですが、さらに原価率が悪化している可能性も大いに考えられます。少なからずここ数年、全く粗利が稼げていないということになります。

このような販売・財務状況の全体感からも、FCNTが自主再建を断念したのは不思議なことではないですね。
スマホ市場の中の「ニッチ」な地位を獲得してきた企業も、決して盤石ではないということです。皆さんも外部環境も含めて、先々の自社の展開を改めて見つめ直すことも必要かもしれませんね。

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パチンコとゴルフの関係

2023年5月31日 水曜日

ちょうど気候のいい時期に入り、ゴルフ好きな方には楽しい時ではないでしょうか。
今回は「ゴルフ関連」にフォーカスしてみました。

ここ3年のコロナ禍は「ゴルフは感染リスクが低い」と言われたことから、ゴルフ界にも影響を与え、20代、30代などの若年層のゴルフ人口が増えたそうです。
リモートワークの普及で都市部、特に東京都内中心部ではオフィスの縮小、移転などもあって空室がかなり増え、そこに“インドアゴルフ練習場”がつくられるケースが多くなったようです。
一方、屋外の大きな練習場は閉鎖が続いているようです。
全日本ゴルフ練習場連盟の調査によると、2022年の1年間に屋外練習場は全国で31カ所減り、インドア練習場は57カ所増えたそうです。


実際に、我々の東海圏内でも名古屋を中心にちょっとした居抜き物件に、インドアゴルフ練習場ができているのをかなり多く目にするようになりました。
「ちょっとした」と言える程、かなり狭いテナントスペースを再利用しているという驚きもありますが、関東地域ではパチンコ店を再利用したインドア練習場もできているそうです。
例えば「インドアゴルフ・リーブル」という店舗は、まさにパチンコ店を彷彿させる建物の外観。
リーブルのグループ会社が運営していたパチンコ店を“業態変更”してインドア練習場にするという試みです。


パチンコ人口が年々減っている中、コロナ禍もあって、パチンコ業界としても新しい業態へのシフトを急ピッチで検討していることでしょう。
レジャー白書によると、2021年のパチンコ参加人口は720万人でピーク時の4分の1ほど。警察庁の発表資料によると店舗数も2022年は7,665店で、前年より800店ほど減少。業界も回復に力を入れているそうですが、やはり今後はパチンコ店のみの事業展開では難しいのも事実です。


この業態変更した「インドアゴルフ・リーブル」は、立地も駅から徒歩圏内でありながら、パチンコ店ならではの広さと天上の高さが最大限に活かされ、打席数も多く、先ほどの名古屋の小さなインドア練習場とは異なり、郊外の屋外練習場で練習しているような気分になれます。
さらに打席は壁で仕切られていてプライベート感がしっかりある造り。これは、ミスショットした時に丸見えで恥ずかしいという初心者でも落ち着いて楽しめる空間にするためのようです。私的にも嬉しい造りです(笑)


この「インドアゴルフ・リーブル」で、もう1つすごいのは「運転免許返納者限定特典」というサービスです。
車で郊外の練習場やラウンドに行けなくなったとしても、近くのインドア練習場に入会してゴルフに触れることができるということです。
運転免許返納者には、入会金を無料、初月会費50%オフの特典。
しかも、この「インドアゴルフ・リーブル」は24時間営業。
高齢者の方であれば、毎日行ったとしても1日330円ほどで済む料金設定だそうです。毎日は行かないとしてもリーズナブルな価格設定ですよね。


団塊世代が2030年に80歳になる「2030年問題」。
ゴルフ業界にとって、若年層の取り込みと共に高齢者のリタイア防止が大きな課題になってきます。
若年層のゴルフ参入への壁として“車離れ”による練習場やゴルフ場への「足」がない、という問題があります。同じく高齢者についても免許返納後の「足」の問題が出てきます。
最寄り駅からの送迎サービスなどで、練習場やゴルフ場に行けるようなサービスを考えていくことが必要になるのではないでしょうか。
パチンコ業界のみならず、ゴルフ業界にとっても今回のリーブルの取り組みが何かのヒントになるかもしれないですね。

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おとなの夢のコーナー

2023年5月12日 金曜日

皆さんはチョコレートの「リンツ」をご存知ですか?チョコレートに詳しくない方でも“綺麗な包みの丸い飴玉のようなチョコレート”を一度は口にしていると思います。私はチョコレートには詳しくありませんが、誰でも知っている“ゴディバ”や“デメル”、私も美味しいと思う“ヴィタメール”…おそらくこれらに並んで日本でもよく知られるのが“リンツ”だと思います。

リンツは、1845年に創業したスイスのチョコレートメーカーです。リンツの偉業は、チョコレート史上初の「なめらかな」「とろける」チョコレートをロドルフ・リンツさんが発明したことです。それまでザラザラとした舌ざわりが当たり前だったチョコレートに、「コンチング」という手法を採用し現在のチョコレートのスタンダードでもある「なめらかな」「とろける」食感を1870年代に取り入れたそうです。リンツの代表とも言えるチョコレートは「リンドール」という商品。リンドールの発売は60年以上前で「シェル」と呼ばれるチョコレートの外殻の中に、なめらかなフィリングを詰めた2層構造のトリュフチョコレートです。このフィリングの口どけのなめらかさがリンドールの大きな特徴です。


リンツの日本法人は、リンツ&シュプルングリージャパンという会社。2010年設立と比較的新しい会社ですが、かなりのハイスピードで店舗を広げ、現在直営店83店舗とオンラインストアで事業を展開しています。なんと業績も好調で2桁成長を続けてきているようです。成長の理由の一つが、“量り売り”という特徴的な販売方法です。フロアの中央にリンドールを山盛りに陳列し、そこから色とりどりのリンドールから好みのフレーバーを選んで袋に詰めていくことができるわけです。

リンドールは22種類のフレーバーがあり、季節ごとの期間限定商品もこの中に加わります。まさに選ぶ楽しさ・喜びの演出ですね。ひと昔前、百貨店の子供のお菓子売り場にチョコやラムネ、駄菓子が山盛りに積まれた陳列場があり、袋詰めできるコーナーを見かけました。その“夢のような楽しい場所”を、リンツは「大人の夢のコーナー」として作り出しているわけです。さらにリンドールはキラキラした紙包みでキャンディのように包まれているので、見栄えもいいですよね。

実はこのような販売方法をとっているチョコレート店は他にはないらしく…リンツの大きな強みとなっているそうです。価格もリンドールは他の高級チョコレート店のチョコレートよりは少し安く、1個あたり110円程度。若い世代も気軽にいろいろなフレーバーを購入することができるわけです。


またギフトとしての需要も高いようです。コロナ禍、チョコレートの業界も少なからず売上の影響を受けたようですが、リンツはオンラインショップを業界の中でかなり早い段階(日本法人の創業後まもなく)で始めていたこともあり、成長を止めずに続けてこられました。さらにオンラインショップで購入したお菓子を贈り物にできる「デジタルギフト」やアプリの構築など、デジタル化にも取り組んできたようで、リアル店舗の楽しさとオンラインでの利便性の両方をうまく活かしたというわけです。

リンツはよく言う「オンライン」で販売して広げるという戦略に重きを置いているだけでなく、オンラインでの接点をきっかけに、リアル店舗に来て楽しんでもらうという動線イメージを考えているようです。その仕掛けが今年の初めに期間限定で開催された「リンドール診断」という企画です。

サイト上で6つの質問に答えると、自身の性格などを全22種類のリンドールのフレーバーに例えて診断し、自分に合うリンドールを選び出してくれるという面白い企画です。そして診断後には、公式LINEにてクーポンが発行され、店頭で提示すればリンドールの人気フレーバーBest5から好きなフレーバーを2つもらえたそうです。色々な仕掛けを行っているリンツがどのような成長をしていくのか楽しみですね。

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