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【APA】絶妙なバランス感覚経営

 
 
   

2024年4月30日 火曜日

 

 

皆さんは、アパホテルに泊まったことはありますか?
ビジネス利用で泊まったことが多い方もいるのではないでしょうか。


都市部であれば、アパホテルの100メートル先にもアパホテルがあるくらい見かけます。
アパホテルと言えば、インパクトのある元谷社長で有名ですよね。
1971年の創業から「52期連続黒字」を続けていて、しかも高収益なようです。
コロナ禍はさすがに苦しかったようですが「全国のアパホテルを30連泊できる」サブスクプランを発売するなど、創意工夫で乗り切ったそうです。
ちなみにこのプランは9万9,000円と絶妙な価格設定で、学生の休暇旅行に好評で結果1億円以上の売上だったそうです。
これだけ聞いてもさすがの一言だと思いますが、同グループと他ホテルとは一体何が違うのでしょう。

アパホテルには他とは違った戦略がいくつかあると思いますが、特徴的なポイントを3つ絞ってみました。

引用:https://www.apahotel.com/

これは他ホテルとは違い1ポイントにつき1円相当の《現金キャッシュバック》を行なっていることです。
このポイント制度においても、アパ提携のクレジットカードを使用する等の諸条件をクリアすれば最大15%の還元率になり、とにかくリピーター作りに長けた制度があることです。
現在2,000万人を超える会員数のようで、この中の何割かがリピートするだけでも効果大ですよね。

1日24時間のうち11時~15時など、ホテル客室がほぼ使用されない“空白時間”を減らし、有効活用するというものです。

アパホテルは客室のリメイクも自社で行うため、早めの時間にチェックアウトした客室を1時間後に再販売するといった《部屋の2度売り》が可能なのだそうです。
ホテルのベッドに寝転んで休憩も可能だし、大浴場併設店ならリフレッシュもできるということです。当然、宿泊よりも滞在時間が短いため、料金も割安。
リモートワークやフリーランスで働く人に喜ばれるわけです。
空白時間の未稼働をなくすのは、企業努力そのものですよね。

他ホテルでも「日帰りプラン」を実施しているようですが、客室のリメイクがアウトソーシングであったり、人員配置、社員人数、オペレーションなどの面で簡単ではありません。
これらの実現には、豊富に人材が揃っているということが条件にもなるわけで、アパホテルが高収益にこだわる理由は、持続可能な経営を行うためなのです。

そこにはまず人材が不可欠。だからこそ確実に収益を上げ、社員に給料や福利厚生として還元する原資にしているのです。
人手不足が叫ばれるホテル業界にあって、アパホテルが2024年4月度に獲得した新卒内定者の数は600人。

飲食業界やサービス業界は人手不足が長く続き、他業種からの流入も少ない状況ですが『サービス業界で働きたい』と考えている人は一定数います。
その人たちに選ばれるためには、持続可能な給料ベースアップや福利厚生が充実していると判断される《信頼》が必要であると元谷社長は考えているそうです。

出店地の選び方も一般的に選ばれる整形地ではなく、変形地を安く購入し独自の設計力を活かして、面積に対しての客室数を整形地と同じ数で維持しているというのです。
それだけでなく《客室のコンパクトさ》も徹底した経費節減の証です。アパホテルに泊まったことのある方からは『部屋が狭い』とよく聞きます。

それもそのはず、ベーシックなアパホテルの客室は基本的にユニットバスを除いてシングル9㎡〜だそうです。9㎡というのは、旅館業法で決められた最低限の広さ。
《客室を広くしても単価を高くとれるわけではない》というアパ理論の通り、他のホテルチェーンに比べ1㎡当たりの売上は業界トップだそうです。



他にも様々な面でこの業績を支えている成功要因があると思いますが、ホテル業界は利用者目線だけでサービス過剰にすると社員への負荷が増え利益も減りがちですが、アパホテルは絶妙なバランス感覚で経営していると言えます。
今後の動向に注目していきたいですね。


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経営コンサルタント
渡邉拓久

 

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